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採用・法律

第101回 『知財戦略で未来を切り開く』

中小企業の新たな法律リスク

前回、賛多弁護士から元気をもらえたと言って帰った小林社長ですが、悩んだ様子でまた賛多弁護士のもとを訪れました…

* * *

小林社長:社長である私の考え方次第で、当社の未来の成長度が決まるというお話を聞き、頑張ろうと思ったのですが、具体的にはどのようなことを検討したらよいのかと悩みまして…

 

賛多弁護士:なるほど、それでは参考となる話をご紹介いたしましょう。小林社長はQRコードをご存知でしょうか。

小林社長:もちろんです。最近は飲食店の注文もQRコードでやることが増えましたよね。

 

賛多弁護士:そうですね。実は、QRコードは、日本の会社である株式会社デンソーウエーブが開発したもので、特徴的な模様をつけた二次元コードを読み取ることで情報を簡単・高速かつ大量に取得管理できるシステムです。現在においても、このQRコードを超える二次元コードは開発されていません。



小林社長:それはすごいですね…!もちろんQRコードの特許をとり、その使用料でデンソーはさぞ潤ったのでしょうね。

 

賛多弁護士:いえ、デンソーはQRコードの仕様をオープンにし、QRコードを誰でも自由に使えるようにしたのです。

 

小林社長:ええ!それでは、デンソーはせっかくQRコードという素晴らしい発明をしたにもかかわらず、儲けることができなくなってしまいませんか!?

 

賛多弁護士:小林社長、発想を変えてみましょう。デンソーは、特許が公開してから20年は独占的に使用できるのに対し、商標は登録料を払い続ければ、半永久的に独占することができる点に着目しました。そこで、まず、デンソーは、QRコードを自由に使用できるとすることで、全世界でQRコードを使用して貰えるようにしました。そうしたところ、航空券チケットへのQRコードの搭載など様々なQRコードの利用方法が生まれ、瞬く間にQRコードは世界中に広まりました(※1)。

 

小林社長:でもタダなんですよね?

 

賛多弁護士:そう結論を焦るのはよくありませんよ。デンソーは、QRコードが世界中に広まったタイミングで、QRコードを使用する際には、「QRコードはデンソーの登録商標です」と記載することをお願いするようにしました。多くの企業はその要請に応じ、デンソーは、QRコードに関するビジネスにおいて確固たる地位を築き上げました。

 

小林社長:なるほど、QRコードに関するビジネス界において確固たる地位を築けば、QRコード読み取り機の開発や新たなシステムの開発など無限のビジネスチャンスがありますもんね。

 

賛多弁護士:そのとおりです。商標は半永久的に独占できることに着目した、まさに未来を見据えた発想ですよね。

 

小林社長:すごいなぁ…QRコードのお話をお伺いして、知財戦略が重要になるという気がしてきました。

 

賛多弁護士:そうですね、QRコードの例は商標ですが、私としてはビジネスモデル特許の観点も今後非常に重要になってくると考えています。

 

小林社長:ビジネスモデル特許ですか…?

 

賛多弁護士:ビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルを実施する際の技術に関する工夫についての特許です。

 

小林社長:うーん、なかなかイメージがわかないですし、なにか特殊な技術を用いなければならないのでしょうか。

 

賛多弁護士:そんなに難しく考える必要はないですよ。例えば、ビジネスモデル特許として身近なものは、CDやDVDレンタル業務を行っているTSUTAYAが登録した、借りた商品を返却する際、直接店頭に行かなくともポストに投函することによって返却することができるというシステムが挙げられます。

 

小林社長:ああ、私もあのシステムができたときは便利だなーと思いました。

 

賛多弁護士:このビジネスモデル特許は、ポストを置き、そこに商品を返却してもらった上で、配送業者がTSUTAYAに商品を届けるというシンプルな仕組みですが、レンタル商品であるCDやDVDについて、配送業者を通じて商品の追跡、商品の管理ができるというメリットもあります。

 

小林社長:なるほど!ビジネスモデル特許というともっと壮大なものをイメージしていていましたが、純粋に便利だなと思えるシステムであることが重要ですね。

 

賛多弁護士:そうなのです。仕組みの複雑さが重要になるというよりは、ビジネスモデル自体が多くの利用者にとって便利だな、と思ってもらえるかという点が重要かと思います。

 

小林社長:なるほど…当社でもなにかそういったビジネスモデル特許が取得できるシステムがないか検討してみます。

 

賛多弁護士:システムの内容を検討するに当たっては、ビジネスを発展させるときに誰にどのようなことをして欲しいかといった視点やライバル社がやりそうなことを想定する視点が重要ですよ。

 

小林社長:なるほど、そういった視点で検討し、未来思考で頑張っていきたいと思います!

 

このように知財戦略は、会社の未来を切り開く鍵となる可能性があるものです。一度、ご紹介したケースを手がかりにして、ご自身ビジネスの未来を考えてみてはいかがでしょうか。

※1 https://www.jpo.go.jp/news/koho/innovation/01_qrcode.html

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 横地未央

 

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