スーパーマーケットを経営する伊藤社長が、賛多弁護士のところへ法律相談に訪れました。
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伊藤社長:本日は、法律相談といってよいのか分からないのですが、少し前からニュースで話題になっている成年年齢の引き下げについて、賛多先生にご質問させていただけますでしょうか。
賛多弁護士:民法の改正によって、成年年齢が18歳に引き下げられた件ですね。どんなことでもご質問ください。
伊藤社長:ありがとうございます。ニュースでは、成年年齢が引き下げられることによって18歳や19歳でも一人で契約することができるようになると報じていました。言い換えると、未成年者は一人で契約することができないということでしょうか。当社では、酒類やタバコを販売する際には年齢確認を行って20歳以上の人に限り販売をしておりますが、それ以外については未成年者に対しても商品を販売しています。仮に未成年者は一人で契約することができないのであれば、商品を販売するという売買契約を未成年者との間で締結することは問題にならないのでしょうか。
賛多弁護士:民法では、未成年者が契約を締結するなどの法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならないと規定されています。法定代理人とは親権者や未成年後見人のことをいいますので、未成年者は、親権者等の同意を得なければ、契約を締結することができないといえます。
しかし、全ての法律行為について法定代理人の同意が必要というわけではありません。例えば、①未成年者が債務の免除を受ける場合など、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為や、②生活費の仕送りを受けた未成年者が日用品を購入する場合など、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内で処分すること、③お小遣いをもらった未成年者がお菓子を購入する場合など、法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を処分することについては、法定代理人の同意は必要ありません。この他に、営業を許された未成年者がその営業に関する法律行為をする場合も同様です。
伊藤社長:分かりました。当社のようなスーパーマーケットでは、②や③の場合が多いと思いますので、特に心配はなさそうです。未成年者が法定代理人の同意を得ないで契約を締結すると、どうなるのでしょうか。
賛多弁護士:未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、取り消すことができます。未成年者側に取消権を認めることによって、未成年者を保護しているのです。法律行為が取り消されると、初めから無効であったものとみなされます。例えば、売買契約を締結したものの未成年者が代金の支払を行う前に取り消したときは、代金の支払義務は生じないことになります。他方、代金の支払を行った後に取り消したときは、原状に復させる義務を負いますので、代金を受領したお店側は代金を返還することになります。
伊藤社長:代金を返還しなければならないというのは、困りますね。
賛多弁護士:そうですね。また、未成年者が返還義務を負うのは、現に利益を受けている限度に限定されている点にも注意が必要です。取消の時点で受けた利益を浪費されていた場合は、その部分については返還されないことになります。
伊藤社長:分かりました。そういえば、18歳をもって成年となりましたが、20歳未満の人に対して酒類やタバコを販売することはできないのですよね。
賛多弁護士:ご指摘のとおりです。ちなみに、従来は、未成年者飲酒禁止法や未成年者喫煙禁止法という題名でしたが、民法の改正に伴い、ニ十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関する法律やニ十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関する法律へと改めています。
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成年年齢関係についての民法改正は、日常生活のみならず様々な法律へも影響を与えています。成年年齢の引き下げに伴う年齢要件の変更については、下記①が参考になります。
事業者としては、成年年齢の引き下げに伴う年齢要件の変更に対応できているかという点について確認し、必要に応じて従業員へ説明するなどして、適切に対応することが求められます。
詳細については、下記が参考となります。
①法務省「成年年齢の引下げに伴う年齢要件の変更について」
https://www.moj.go.jp/content/001261083.pdf
②内閣府大臣官房政府広報室「18歳から“大人”に!成年年齢引下げで変わること、変わらないこと。」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201808/2.html#:~:text=1-,%E3%80%8C%E6%88%90%E5%B9%B4%E5%B9%B4%E9%BD%A2%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%A4%E3%81%8B%E3%82%89%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B%E3%81%AE%EF%BC%9F,%E3%81%AB%E6%96%B0%E6%88%90%E4%BA%BA%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 小杉太一