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製造業

第177号 「ナゼ?」を繰り返す改善効果

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回は、日本各地の「足湯」を撮ってきました。何度も言いますが、本文にはまったく関係のない、面白いモノを見つけるのが、私の出張の楽しみのひとつなのです。

●長い足湯でびっくり。これは箱根「彫刻の森美術館」 です。

kaki177-1.jpg

●続いて、なんと温泉街にも足湯を発見。山形県の天童温泉です。

kaki177-2.jpg

●これは足湯ではありません。ドクターフィッシュという魚に、足の表面についた角質を
食べてもらうのだそうです。 魚がちょっと気の毒デスが・・・。滋賀県の長浜で見つけました。

kaki177-3.jpg

 前々回(175話)に、数を数える改善で登場したN社で、事件が起きました。もう大丈夫と思った作業改善でしたが、再び不良が発生してしまったとのこと。

 しかし、N社では若い専務のY氏を中心に、みんなで対策を打ちました。そして、私が一緒にいた時よりも、更に筋の通った改善ができたようです。今回はそこで起きたことを、Y専務に報告していただきました。ではY専務よろしくお願いします。

*****     *****     *****     *****

【Y専務・談】
 前回の改善で、1箱20個入りの箱詰めの作業で、19個しか入っていない不良品が発生してしまう対策として、入れ方を「3段で下から6個・6個・8個」だったのを、「1段が10個入りで2段」に変更しました。

 これだと、一段の数がいつも同じ10個であり、また、「5個×2列で10個」というのは一見して10個と判ります。

 だから、入り数の間違いを防げると思っていましたが、実はこの方法でも、抜けがありました。そのため、この方法に変更した後も、残念な事に19個入りの箱が出てしまったのです。

 そこで、「何故この方法で失敗できてしまったのか?」を、全員で現場にて会議しました。すると、10という数は見て判りやすいと思っていたのですが、袋が重なると良く判らない状態になることがしばしばあったと、原因が分かったのです。

 そこで、みんなで改善策を話し合い、最初は箱の大きさや入り数の変更も考えたのですが、これらはコストが上がったりお客様への登録変更が必要でお客様の手間を煩わすなどが起きるので、今回の対策方法としてはナシと考えました。

 やはり、現場で全員集まり、そして実践して行くと、良いアイデアが飛び交います。そういう良いアイデアをたくさん出して考え抜いた議論の結果、最終的には、19個ができない方法に変更できました。

 それは、製品を箱に詰める際に、必ず片手に1個ずつ両手で2個持ち、2個セットで作業して行くという事。すなわち、「左右の手で2個掴み、必ず2個を同時に箱に収める」というもので、最初は皆「やりにくそうだ」と思っていました。

 というもの、2個同時に入れた方が早いのですが、わが社のみんなは1個ずつ入れる作業に慣れているので、そうは思えなかったようです。

 そこで思い出したのが、柿内先生からいつも言われている「すぐやること!」です。さっそく我々は2つにチーム分けをしてて、<チームA>は両手で2個ずつ作業、もう一方の<チームB>は片手で1個ずつ作業で、20個箱を完成させて競争する事にしました。

 さて、5分ほど各チームで練習をして、5人を選抜し、いよいよ、詰め終わった方は手を挙げるというルールにして対戦しました。

 結果は、<2個入れをしたチームA>の圧勝!!5回対戦で先鋒から大将まで圧勝でした。

 しかも、敗者の<1個入れのチームB>には、社内で作業が最速と称される熟練の人がいる一方、勝者の<2個入れのチームA>には、普段作業しない事務の女の子がいたにも関わらずの勝利です。

 つまり、2個同時入れによって、19個などの奇数の入れ間違いは出来ませんし、作業も速く手数も減ったのです。

 結果、最初は半信半疑だった社員も、実践して比較する事で、慣れれば絶対2個入れの方が良いのだ!と、全員一致で理解することが出来ました。

 さらに、勝負本番で入れる前に、20個ちょうどではなく、あえて多くの数を出した場合に、<1個入れチーム>は余りの数を見て確認する事が多かったのに対して、<2個入れチーム>は迷う事なく、20個で手を挙げる事も判りました。

 さらに、2個入れの場合、片手に製品の不良があった場合に、1個だけ箱には入れずに必ず不良は先に離してから、良品を掴み2個を同時に箱に収めれば奇数が出来ないという、明確なルールも生まれました。

 下の写真をみていただければお分かりのように、本当に、全員でワイワイ大変楽しく、有意義な実証時間となりました。

●ワイワイ楽しく、有意義な結果が出た改善風景


kaki177-4.jpg この経験を通して、私は、問題があったから直ぐにやり方変えよう!というのも有りですが、「何故失敗したか?」を根気強く全員で逃げずに考えた結果、さらに深い議論が出来たと考えるようになりました。

 「ナゼ?」と考える事は基本ですが、今回は、その「ナゼ?」がいつもより深い所まで、しかも全員で考える事によって、自分を含めて、社内全体のレベルの底上げになりました。

 以上で、わが社の改善報告を終わります。

*****     *****     *****     *****

 Y専務ありがとうございました。

 このレポートを聞いて、私がいた時よりも更に良い改善ができてしまった!!残念、アーくやしー、などと私は思っていません。私がいなくてもいい改善ができるというのは私にとってはとても嬉しいことです。

 そして実はこのようなことは頻繁に起きているのです。(でもちょっと悔しいかな…。 ^^:)

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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