従業員は常に自分の仕事の「成果とプロセス」を企業への貢献として認めて欲しいと考えています。それがまた労働者としての「生き甲斐」を形成しています。このことは「労働者は評価されることを期待している」からであり、自分が組織の一員として評価されていると気づいたとき、俄然「やる気」が湧いてきます。さらに、その勤務成績が賞与の合理的な配分に活かされていると確信できたとき「やる気」は継続的な「向上心」にまで高まります。
つまり、好循環を確実なものとするためには、社員一人ひとりの仕事品質を年2回「成績」として評価し、その勤務成績にふさわしい賞与支給を実現することが必要なのです。
この勤務成績にふさわしい賞与配分を実現するためには、担当している「仕事の難易度と責任の重さ(責任等級)」を根拠に判断することが不可欠であり、その評語(SABCD)別の賞与配分を実現するための評価のことを賃金管理研究所では特に成績評価制度と呼び、それ以外の評価制度とは区別しています。
この成績評価は賞与の配分を合理的に行うために定期的に実施する制度ですが、なぜ賞与配分のために成績評価が必要なのかを理解するためには、賞与の本質を明確に理解することが必要です。
賞与の本質については、「賃金の後払い説」や「生活費の赤字補填説」などいろいろな主張や説明が行われています。しかし理論的につきつめていくと、結局は労使協調、安定雇用を重視し、継続的好循環を実現するために育まれた、わが国固有の考え方に根ざした「労働者への利益分配」、つまり究極の「利益還元」ということになります。
賞与が労働者への利益の還元である以上、「会社の利益」に大きく貢献した者とそれほどでもなかった人との間には、適正な支給額の差をつけることはしごく当然のことであり、従業員も公正な配分を望んでいます。
さらに、年2回の成績評価の結果が賞与の合理的な配分に反映されるだけでなく、評価の累積が人事管理上のいろいろな場面に反映されることで、従業員と企業の「信頼関係」が熟成されていくと考えることができるのです。
もしも、職場で従業員一人ひとりの「やる気」と「向上心」を高める上で最も重要な成績評価がないがしろにされ、努力も貢献も賞与配分に反映されないとすれば、それは悪平等であり、労働者のモチベーションを高揚することも、増収増益・継続的な好循環を実現することも考えられません。つまり、社員一人ひとりの「成績評価」を軽視することは、経営の怠慢だと言われても仕方がないことです。
参考書籍:成績評価制度質疑応答30選より一部抜粋