menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

税務・会計

第16回 部門別採算表をつくる手順

新・会計経営と実学

 今年から採算表をつくって、部門別採算経営を行おうとしている会社があります。
その会社の経理部長が相談に来られ、
「具体的にどのような手順で、採算表のフォームをつくっていけばよいのでしょうか?」
と、ストレートに尋ねられました。

そこで今回は、部門別採算表をつくる手順を説明していくことにしましょう。


まず、採算単位である部門を決める必要があります。
その際、会社の組織や業務の流れに基づいて、部門を分けていきます。

下の「1」の左図のような組織図と業務フローから、この会社は、原料を仕入れてA工程で加工し、
B工程で仕上げて、お客様に販売していることがわかります。
このような業務形態の場合には、総務部門を除いて考えると、採算表の部門は、営業、A工程、B工程の
3つに分けることができます。


tam15-16-1.jpg

部門が決まれば、次は「部門ごとの売上と経費をどう把握するのか」を決めなければなりません。
この会社では、第14回でも説明したように、製造の最終工程が、お客様に売る売価で自部門の売上を計上し、
営業部門へ営業口銭を支払うルールがピッタリと当てはまります。

そのしくみを部門別採算表に表すと1の右図のようになります。

B工程は最終工程ですので、社外売上を計上し(①)、営業部門に口銭を支払います(③)。
A工程は取引先から材料を仕入れ(④)、加工を施した後、半製品をB工程に売りますので(②)、
A工程は社内売上のプラス、B工程はマイナスの社内売上を計上します。

さらに、材料仕入以外の経費を部門ごとに集計し、差引収益を計算します。
差引収益から人件費を差し引き、キャッシュフローに近い本当の利益を計算するのです。

さらに、在庫増減を加味し、会計利益を一番下の欄に設け、決算書の利益と一致させるようにします。


それでは、「実際の数字を入れてみましょう」といきたいところですが、
ここで一つの大きな壁にぶつかります。

社外売上は、通常の月次決算で数字を捉えることができますが、
社内売買の数字を決めることは容易ではないからです。

そこでどうするかというと、
下の「2」の表のように、とりあえず社外売買と経費だけで、採算表をつくってみるのです。

 tam16-2.jpg

部門の経費を見ながら、社内売買価格と営業口銭を仮決めします。
次に、仮決めした採算表を「3」のようにつくって、利益等のバランスを考えていきます。
極端に利益が出ている部門や赤字になっている部門があれば、社内取引価格と営業口銭の妥当性を
もう一度検討します。

tam15-16-3.jpg

こうして各部門の納得する価格が決まれば、経営会議をスタートさせます。

社内売買がなかなか決まらず、途中で断念される会社もあります。
しかし、「何としてでも部門別採算経営を行うんだ」という社長の強い思いがあれば、全社員に伝わり、
必ず「みんなでやっていこう」と盛り上がります。

そして「具体的にどうすればいいのか」という知恵が生まれます。
多少の困難はあるかもしれませんが、まずは採算表をつくり上げて、ぜひとも経営会議をスタートさせて
いただきたいと思います。
 

第15回 社員が意見を出し合い納得した採算表をつくる前のページ

第17回 奥さんの家計簿に学ぶ経営会議の進め方次のページ

関連記事

  1. 第20回 奥さんの家計簿経営術 3 ~みんなの前で誓いの言葉を発表してもらうわ~

  2. 第14回 営業の厳しさが製造現場まで伝わる組織

  3. 第7回 会社の中を見える化すれば、経営がわかる

最新の経営コラム

  1. 楠木建が商売の原理原則を学んだ「全身商売人」ユニクロ柳井正氏

  2. 第10講 WILLとMUSTをCANに変える:配属に不満がある社員とどう関わるか

  3. 第147回『紫式部と藤原道長』(著:倉本一宏)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 採用・法律

    第19回 『業務委託契約に潜む法的リスクとは!?』
  2. サービス

    67軒目 “魚屋のイタリアン” 誕生
  3. マネジメント

    人を活かす(1) 項羽と劉邦
  4. 人間学・古典

    第116講 「論語その16」 命を知らざれば、君子たること無きなり。
  5. 人事・労務

    第22話 2011年の春季労使交渉
keyboard_arrow_up