今年から採算表をつくって、部門別採算経営を行おうとしている会社があります。
その会社の経理部長が相談に来られ、
「具体的にどのような手順で、採算表のフォームをつくっていけばよいのでしょうか?」
と、ストレートに尋ねられました。
そこで今回は、部門別採算表をつくる手順を説明していくことにしましょう。
まず、採算単位である部門を決める必要があります。
その際、会社の組織や業務の流れに基づいて、部門を分けていきます。
下の「1」の左図のような組織図と業務フローから、この会社は、原料を仕入れてA工程で加工し、
B工程で仕上げて、お客様に販売していることがわかります。
このような業務形態の場合には、総務部門を除いて考えると、採算表の部門は、営業、A工程、B工程の
3つに分けることができます。
部門が決まれば、次は「部門ごとの売上と経費をどう把握するのか」を決めなければなりません。
この会社では、第14回でも説明したように、製造の最終工程が、お客様に売る売価で自部門の売上を計上し、
営業部門へ営業口銭を支払うルールがピッタリと当てはまります。
そのしくみを部門別採算表に表すと1の右図のようになります。
B工程は最終工程ですので、社外売上を計上し(①)、営業部門に口銭を支払います(③)。
A工程は取引先から材料を仕入れ(④)、加工を施した後、半製品をB工程に売りますので(②)、
A工程は社内売上のプラス、B工程はマイナスの社内売上を計上します。
さらに、材料仕入以外の経費を部門ごとに集計し、差引収益を計算します。
差引収益から人件費を差し引き、キャッシュフローに近い本当の利益を計算するのです。
さらに、在庫増減を加味し、会計利益を一番下の欄に設け、決算書の利益と一致させるようにします。
それでは、「実際の数字を入れてみましょう」といきたいところですが、
ここで一つの大きな壁にぶつかります。
社外売上は、通常の月次決算で数字を捉えることができますが、
社内売買の数字を決めることは容易ではないからです。
そこでどうするかというと、
下の「2」の表のように、とりあえず社外売買と経費だけで、採算表をつくってみるのです。
部門の経費を見ながら、社内売買価格と営業口銭を仮決めします。
次に、仮決めした採算表を「3」のようにつくって、利益等のバランスを考えていきます。
極端に利益が出ている部門や赤字になっている部門があれば、社内取引価格と営業口銭の妥当性を
もう一度検討します。
こうして各部門の納得する価格が決まれば、経営会議をスタートさせます。
社内売買がなかなか決まらず、途中で断念される会社もあります。
しかし、「何としてでも部門別採算経営を行うんだ」という社長の強い思いがあれば、全社員に伝わり、
必ず「みんなでやっていこう」と盛り上がります。
そして「具体的にどうすればいいのか」という知恵が生まれます。
多少の困難はあるかもしれませんが、まずは採算表をつくり上げて、ぜひとも経営会議をスタートさせて
いただきたいと思います。