menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

第九十八話 「農産業の確立」(株式会社農業総合研究所)

社長の口ぐせ経営哲学

農業ビジネスに対する関心度は日増しに高まっている。農業を儲かるビジネスに変えるために、各社が競い始め参入企業も増えている。中でも、注目を集めているのが農業創造型のベンチャー企業として脚光を浴びているのが株式会社農業総合研究所(本社・和歌山市)である。成長企業で、全国に12箇所の集荷場、約3000の登録生産農家、全国の大手スーパー、ホームセンターなどと取引を行っている。


生産農家と消費者を結ぶ、新しい農業の仕組みを実現している。従来の生産者、農協、代理店(問屋)、小売業のルートではなく、“生産者にリスクを負ってもらい、自分で生産物の価格を決める”という新しいやり方である。屋号は「都会の直売所」で、大手スーパーの野菜コーナーを設置している。全国に農産物の直売所は約1万5000箇所あるといわれている。大半が農家の近い地方にある。「都会の直売所」のコンセプトで人口の多い都市部に農産直売所を開設している。


「汗水たらして作った農産物が二束三文で扱われる」「農家の手取り額が低すぎる」「生産農家と消費者の関係が“顔の見えない”状態になっている」。農業総合研究所の及川智正社長(37歳)は生産農家を自ら経験した上で、「農業を産業にしたい」「持続可能な農業ができないか」という発想から会社を興した。及川氏は農業大学を卒業した後、専門商社のサラリーマン生活も経験したが、妻の実家(和歌山市)で新規就農を経験する。


農業経験後、「農業の仕組みを変えなければ・・・」という衝動にかられ、6年前に生産農家を重視した仕組みを考えて独立した。新しい農業の仕組みとは、生産農家が「価格を自分で決める」「売り先も自分で決める」「売れないときは生産農家がリスクを負う」という新しいシステムである。ある生産農家は「大量で出荷するときは価格が低すぎました。今は、捨てていたものや形の悪いものでも、出せば売れます。売れなければ自分たちの責任ですが、おかげさまで売れています」という。


大手スーパーも「都会の直売所」のコーナーを設置し始めたのは、消費者を集める集客力に魅力を感じているため、コーナーづくりが増えている。言い換えれば、生産農家が流通を選び、価格を決めているという、新しい仕組みである。「都会の直売所」の農産物はセリにかからない分だけ、生産農家の息遣い、やる気が直接に消費者に届くというのが最大の特徴で、消費者にも徐々に支持され始めている。


同社は生産から加工・流通・販売・消費までをバランスよくコーディネートし、農産物が消費者の口に入るまでを企画提案する農産業が自社の使命と捉えている。主要業務は「農産物委託販売システム」「農産物流通販売事業」「農業コンサルティング事業」である。「農産業の確立」に向けて走り続けている及川氏率いる農業総合研究所は変化する農業ビジネスの中で、新しい波紋を投げかけている。
 

                                                    上妻英夫

第九十七話 「生涯現役、生涯勉強」(株式会社イワイ)前のページ

第九十九話 「明るく、元気で素直がいい」(株式会社ベアーズ)次のページ

関連記事

  1. 第十一話 正直な商売をしろ!(殿村食品)

  2. 第六十四話 「商売は行動だ」(みりおんばんぶー)

  3. 第二十九話 現場でけんかをするな(新生食品)

最新の経営コラム

  1. 第221話 令和7年の税制改正

  2. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳 2025年1月15日号

  3. 第50話 採用初任給の大幅な引上げにどう対処するか

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. キーワード

    第56回 「ウルトラマン」「サンダーバード」が50周年で大復活!!~東西を代表...
  2. 不動産

    第62回 駐車場の適正台数や広さ等は…。
  3. マネジメント

    危機への対処術(28) 危機の時代の勇気ある議会人(斎藤隆夫 上)
  4. ブランド

    ビジネスの基本 -名刺交換で与える第一印象-
  5. キーワード

    第76回 《SL動態保存》で地域を再駆動せよ! ~日光市で東武鉄道「C11大樹...
keyboard_arrow_up