消費税の負担は個人消費者よりも企業のほうが重く感じると思います。とくに年間の売上の差が大きかったり、製造するモノによって利益率の差が大きな中小企業は負担を大きく感じることが多いものです。
会社は消費税を預り金として販売先から預かるわけですが、その納付は都度でないため、資金繰りでその資金を使ってしまったということが多くみうけられます。
金融機関にしてみれば、滞納前であれば、その不足資金を穴埋めするための融資を信用保証協会付き運転資金で融資して長期返済となり、結果的に一定額の融資が恒常的に必要となります。
おカネに色がついているわけではないので厳密な資金トレースは難しく、さらには、月別売上の上げ下げや、利益率の差に影響をうけるたびに消費税負担に苦しむ会社が増加していきます。
じっさい、国税庁の統計を見ると、新規発生滞納額の国税の種類では半分以上が消費税になっています(注1)
ところで、税金が滞納している会社の場合、国税優先の原則(注2)があるため銀行融資を受けることはできません。
しかし、消費税の納付に関してなら、とくに中間申告前の段階での資金ショートが判明した時点で即時融資対応すれば融資を受けることもできます。
それでも税金の納付期限を過ぎた場合、銀行以外の貸手からの資金調達や売掛金・買掛金の回収・支払で調整したり、あるいは給料の遅配で対応するといった方法がじっさいにとられています。
現在はもう存在しない会社ですが、新たに資本関係がないが、実質同じ経営者が支配する免税事業者の会社を作り、そこから材料を高めの価格で仕入れて消費税負担を減らしていた会社がありましたが、そんなテクニックが通用していたわけです。
国税側もそんなことは百も承知で「益税の抑制」や「不正の防止」のために2023年10月からインボイス制度が導入されることになりました。
この制度は税の抜け道をふさぐための制度であるため、根本的な対応策はあまりないのですが、売上が少なくて、個人消費者が顧客の会社はあえて適格請求書発行事業者の登録をせずに免税事業者として営業していけばいいわけです。
インボイス制度が始まれば、免税事業者から仕入れれば、その分の仕入税額控除ができなくなり、結果的にその分だけ消費税負担を多くかかえることになります。
それらの影響を受けないためには、簡易課税(注3)を選択するというやりかたもありますが、課税売上高5,000万円以下とか、事業の利益率を考えた場合、はたして消費税負担が減るのかということを試算してみる必要があります。
利益率の高い事業で課税売上高が年間5,000万円以下の事業があるという条件に合致すれば、新会社を作りそこでその事業を行い、簡易課税を選択するということもありえると思います。
いずれにしても、経営者が経理実務や税務実務を知っていて、それを使い予測していかないと、思わぬリスクをかかえこむことがあるものです。
(注1)令和2年度租税滞納状況について「新規発生滞納額の推移」 国税庁ホームページ
(注2) 国税優先の原則、 根拠条文 国税徴収法第8条
(国税優先の原則)
国税徴収法第八条
国税は、納税者の総財産について、この章に別段の定がある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だつて徴収する。
(注3) 簡易課税
以下国税庁ホームページより引用
”課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除することになります。”