ヒト・モノ・カネ…限られた経営資源を上手く活用しながら、会社の利益を向上させていくことが、社長の役割。そのためには自社の現状を見つめ直し、経営を効率化する「業務改善」が欠かせない。しかし、「実際には何をすればよいのかわからない」と、実行したくても足踏みしてしまう現状がある。その問題を解決すべく、10年間で総額1兆円の事業改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現した横田尚哉氏が「利益を最大化する業務改善」の順序を公開する。
第1話は、いかがでしたか。《リソースの余裕を作る》コトができましたか。今回は、そのリソースを何に使うべきかについて、書きたいと思います。
業務改善が必要なときに起こっているのは、「需要面で問題が発生しているか」「供給面で問題が発生しているか」のどちらかなのです。市場が拡大しているときには、供給面で問題が発生しやすく、市場が変化しているときには、需要面で問題が発生しやすいのです。
今、多くのビジネス環境では、市場が変化していると思います。時代が大きく変わろうとしている中で、新しい常識とテクノロジーにより、企業や人々が求めるモノやコトが変わってきています。顧客のニーズに合わせた供給ができるような業務改善が必要だということです。
顧客への関心を高める
あなたの会社の顧客は誰ですか。私は、コンサルティングする時によくこの質問をします。聞かれたほうは、何を当たり前のことを聞いてくるのかと怪訝そうな顔をします。しかし、コンサルタントが当たり前のことを聞くときは、当たり前の答えを求めていないということです。つまり、その会社の顧客への関心が、どの程度なのかを探っているのです。
顧客への関心の段階は、3段階あります。1つ目は、「顧客が誰なのかを知っている」状態です。ターゲットとかペルソナなどのマーケティング用語を聞かれたことがあると思いますが、これらが明確になっているといっても、まだまだ1つ目の段階なのです。
2つ目は、「顧客が何を求めているかを知っている」状態です。この「何を」というのは、商品名やサービス名ではありません。顧客は、何かを達成したくて、あなたの会社にやってきたのです。言い換えれば、顧客は、あなたの会社の商品やサービスが欲しいのではなく、それを手にすることで、何かを達成しようとしているのです。
たとえば、ホームセンターに「電動ドリル」を買いに来た顧客を例に挙げてみましょう。もしあなたが、「電動ドリルが欲しい客」としか捉えられていないと、いくつかの電動ドリルを案内して終わりです。しかし、「穴を空ける道具を探しに来た客」と捉えられれば、ハンドドリルはもちろんのこと、キリやナイフ、ハンマーなども案内できます。
3つ目は「顧客になりきれる」状態です。なりきるというのは、顧客の気持ちと同じ気持ちになることです。何に興味があり、どこに価値観を置き、同じ理想の姿が見えているかです。そのために必要なことは、顧客を観察するだけはなく、顧客に関心を寄せることが大切なのです。関心を寄せれば、顧客の気持ちが気になり、コミュニケーションをしたくなるはずです。
コミュニケーションを増やす
私は、何のために顧客への関心にこだわるかと言うと、顧客のニーズは顧客自身が持っているからです。遠くから眺めているだけでは、わかりません。顧客と直接会い、コミュニケーションしないとわからないからです。顧客からわざわざ、教えてくれるものでもありません。提供する側が汲み取るものです。だから、顧客への関心を深める必要があるのです。
ある企業の幹部は、顧客をイメージできていると言います。そして、そのイメージしている顧客に対して、戦略を立てていると自信満々に話します。顧客イメージは、どのようにして把握したのですかと聞くと、専門家に調査してもらって明確になっていると言うのです。
このような企業の場合、現場の担当者に聞くと、全く逆の答えが返ってきます。顧客の求めているものは、昔と違ってきているのだと言います。お金と時間をかけて調査をしても、その成果は、いつしか陳腐化してしまいます。まして、時代が大きく変わろうとしている時は、すぐに使い物にならなくなります。
だから、顧客とのコミュニケーションを増やす必要があるのです。店舗でいえば、店員と顧客との《接点を増やす》コトと《会話を増やす》コトなのです。そして、そこから《顧客ニーズを捉える》べきなのです。企業は、この部分にリソースを当てるべきなのです。
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