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第99回 小浜温泉(長崎県) 絶景と夕日と100℃超の高温泉

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■波打ち際の絶景露天

島原半島の西にある小浜(おばま)温泉。橘湾を望む海岸沿いに十数軒の宿が並ぶ南国の雰囲気が漂う温泉地だ。

小浜温泉の歴史は古く、713年『肥前風土記』には「高来(たかく)の峰の西南より、温泉の湧出するのが見ゆ」と記されている。


その温泉の特徴は、なんといっても泉温である。日本屈指の高温泉として知られ、なんと105℃! 入浴用の源泉で、100℃を超える温泉は珍しい。全国的でも有数の高温泉である。

その熱量は「日本一」とも「世界一」ともいわれ、温泉街のいたるところから白い水蒸気がもくもくと立ちのぼっている光景からも、温泉のもつすさまじいパワーを実感できる。

小浜温泉を訪れたら、波打ち際のロケーションが爽快な「波の湯 茜」に立ち寄りたい。貸切利用の入浴施設で、シンプルな露天風呂が2つ並ぶ(1グループ50分、3000円)。

湯船の目の前に消波ブロックが置いてあるほどの波打ち際で、穏やかな橘湾を一望できる。ひょっこりとフナムシが姿をあらわすのも、波打ち際であるがゆえ。漁船からも丸見えの開放感は九州随一だろう。夕日を見ながら入浴できたら最高だ。西向きの温泉街は、夕日の絶景スポットとして知られる。


泉質は、ナトリウム‐塩化物泉。少し舐めてみると、塩分を感じられる。泉温が100℃を超えるため加水はしているが、源泉かけ流しである。塩化物泉は体が温まる泉質なので、短時間で額に汗がにじんでくるが、潮風が心地よいので、意外と長湯もできる。

 

■地元の人に愛される共同浴場

絶景もよいが、小浜温泉の並はずれた熱量を体感したいのであれば、温泉街のはずれにある「浜の湯」がいちばん。地元の人に愛される市営の大衆浴場で、次から次へと入浴客が小さな湯小屋に吸い込まれていく。入浴料は小浜市民だと100円、市外からでも150円という安さ。なんでも値上げされる世の中だからこそ、その格安料金にありがたみを感じる。


湯船は「あつめの湯」と「ぬるめの湯」に分かれており、少しとろみのある透明の塩化物泉がかけ流しにされている。

源泉は加水されているとはいえ、「あつめの湯」の湯船は尋常ではない泉温。46℃以上はありそうだ。私にとっては、「ぬるめの湯」の湯船でも十分熱く感じられたが、地元の常連さんは次々と「あつめの湯」につかっていく。「ぬるめの湯」につかっていたのは私だけだった。それでも、数分も湯船の中にいると、だらだらと汗が噴き出してくる。


「あつめの湯」に浸かる常連さんは顔を真っ赤にしているので、かなり熱を感じていると思うのだが、それでも平気な顔をして腰をどんと沈めて浸かっている。「負けてはいられない」とばかりに「あつめの湯」に足をつけてみたが、あっさりとギブアップ。目の前のおじいさんが「まだまだだな」という表情で微笑を浮かべていたのを、私は見逃さなかった。

 

■長さ105m! 日本一の足湯

ちなみに、一般的には、42℃くらいの少し熱めの湯に10分間浸かるのは、10分間のジョギング、20分間のウォーキングをしたのと同じくらいのカロリーを消費するといわれている。しかも、泉温が高ければ高いほど、消費するカロリーも高くなる。


浴室には10人ほどの地元の入浴客がいたが、みなさん引き締まった体をしていた。少なくともメタボ体型の人は誰ひとりいなかった。熱い温泉はダイエットにも効果があるのかもしれない。ただ、地元の人が通う共同浴場は気が引けるという人もいるだろう。気軽に温泉を楽しみたいなら、海に面した足湯がおすすめ。泉温にちなんだ105mの長さは日本一。足湯につかりながら夕焼けを楽しめるとは贅沢だ。


絶景と夕日と、よく温まる高温泉。全国的に知名度の高い温泉とはいえないが、訪れた人を存分に癒やしてくれる湯街である。

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