前回、「訪問マナー」についてお話しました。今回は、「アウトプット力を高める日々のアクション」についてお話します。
まず、「インプット」と「アウトプット」を簡単に説明すると、インプットは入力・アウトプットは出力ですが、ここで強調したいのは、インプットの「質」・アウトプットの「質」についてです。
出所:wikipedia
突然ですが、皆さんは「エビングハウスの忘却曲線」という言葉をご存じでしょうか?私はこの内容をかなり前に知り、とても驚きました。エビングハウスは、1850年生まれのドイツ人で記憶に関する実験的研究の先駆者です。エビングハウスの忘却線によると、記憶と言うのは覚えた直後が最大で、その後短時間のうちに急速に下降し、以後緩やかな経過を辿るということが示されています。
ではこの時エビングハウスは何を記憶する実験をしたかというと、無意味な3つのアルファベットの羅列を覚えてもらったそうです。無意味綴りを考案した理由は、有意味語では個々によってその単語の連想反応が異なるため、実験条件を統制できないからということです。記憶が消え去る数字は予想を遥かに超えていて、覚えた直後100%だったものが20分後はその42%を忘却するというものでした。
一時間後には56%を、一日後には74%を、一週間後には77%を、一ヶ月後には79%を忘却するというのです!では私たちに出来ることは何だと思いますか?例えばこれらの忘却率という現実があっても『間隔あけて復習』をすればその数字をもとに戻せるだけでなく、覚える所要時間も短くすることが出来るとのことです。(この忘却線を利用して復習用のグッズが販売されています)この忘却線の内容はいろいろなことを皆さんがインプットするとき、私は皆さんに知っていて欲しいと思います。
研修インストラクターとしてコロナ後に感じていることの一つに、研修先の地域や社歴に関係なくお客様にお辞儀をなさる仕方がほぼ皆さん変わったことがあります。お辞儀はそれぞれの角度に腰を折った後その角度で一拍止めてお辞儀をしている動作をお客様にお見せしてから頭をあげます。
この大事なポイントをお忘れになっている方が気づかずなさるアウトプットとしてのお辞儀は、まさにエビングハウスの忘却線と一致します。また、インプットの「質」が低下のまま「私はお客様に笑って『いらっしゃいませ』を言ってるつもり」の笑顔ですと、お客様は「この店員ってなんて不愛想なのかしら」と感じるでしょう。
笑顔をするときに一番必要な表情筋は頬の大頬骨筋。これを忘却したまま不完全なアウトプットをしてしまうと、皆さんの思いがお客様に伝わりません。インプットの「質」を充実させることで、アウトプットも呼応して、より的確な言動の表現になりえます。
なお、脳についてつけ加えさせていただきます。「大脳皮質」や「海馬」など、の名称はすでに馴染みのある言葉と思いますが、大事なことは「大脳皮質」で長期保存されます。情報の仕分けをしているのは「海馬」で、さらに「海馬」によって重要な情報と判断されたものだけが「大脳皮質」で長期保存されます。
この性質を理解した上で、エビングハウスの忘却線のパーセントなどを加味して復習を繰り返すとインプットの一つ一つの「質」を高められ、「海馬」の仕分け作業において重要な情報と認知されるでしょう。この記憶の領域からのアウトプットは、本人の充足感を満たしかつ対面する人に信頼感を与えるでしょう。インプットの「質」を下げない努力(日々、復習を怠らないこと)がより良いアウトプットに繋がります。
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