前回、「今年の新人さんの傾向と育て方」についてお話しました。今回は「振り返りをして良かった点と良くなかった点を自分で発言させて気づきを持たせる」についてお話します。
振り返りをして良かった点を自分で発言させるために有効なのは、自分自身の映像を見てもらうことです。私は何年も前からフォローアップの研修にこの方法を取り入れています。「百聞は一見に如かず」といいますが、先人の的を射た見事な諺と思います。
現場で先輩が指導をなさる場合、一度に何人もということではないでしょうし、映像を撮る機材は、肖像権の問題も起こらないという意味で新人さんご自身のスマホを使わせてもらうのが良いでしょう。映像を撮ることを前もって周知後、指導内容を書いた紙を渡して指導をお進めください。前回も申しましたがこの時期の新人さんたちは、コロナ禍で学生時代を過ごしているため、良いコミュニケーション力が育つ環境で過ごせなかった方々です。
まずそれぞれの職種に合ったお客様応対シーンの項目と指導内容を書きだしてください。例えば、レストランを予約されたお客様がお見えになった時の応対の指導を、あなたが新人さんをお客様としてロールプレイングなさるとします。(新人さんはお客様の気持ちをここで学べます)
【お客様のお迎えとご案内の仕方】
1.お客様に笑顔とわかっていただける笑顔で、速やかにアイコンタクトを取る。「いらっしゃいませ」も同時に言う。
① アポイントの時間が近くなったら、入口に注意をむける。今はまだマスクをしているので、マスクをしていても一目でお客様に笑顔が伝えられるように、「石・岸・西」の言葉で「イ段」の口の開閉を何度が繰り返す。これは表情筋が連動するため、かなりの確率で目の形をニコニコマークと同じ形に出来る。
② お客様の姿が見えたら、入口の方へ小走りで進む
③ お客様が店内に入る一歩目の足が床に着く前に「いらっしゃいませ」を言い終わる。
2.「○○様でいらっしゃいますか?お待ちしておりました!ご来店ありがとうございます。」のお声かけ。
① アイコンタクトを取ってから、30~35度位のお辞儀をする。所作を美しく見せるには「静」と「動」の差をつけるとよい。お客様に自分の頭は早めに、場に合った角度まで下げ、その角度で一拍止める。ここをしっかり見せることで、メリハリのあるお辞儀になる。頭を上げるときは、逆にゆっくりあげるのがポイント。
② もとに戻したら、もう一度アイコンタクトと笑顔。
3.「○○様、お席にご案内します。どうぞこちらへお進みくださいませ。」
①お客様の少し前を先頭で進むが、お客様とは半身ずれた位置でご案内をする。理由は特に初めてのお客様は案内される先が見えると安心できるから。
② 「こちらへ」と言うとき案内する方向に腕を挙げて指し示すが、お客様との空間を遮らないためお客様から遠い手を挙げる。歩き出す足も同じ。歩き出してから挙げていた手をおろす。
③ 場所を指し示す手の指は、伸ばして揃えると見え方がきれいになる。
④ ご案内する場所までの距離は挙げた手の肘の角度で示す。角度の数字が大きいと案内される場所が少し遠いことが分かる。角度を決めたところで、お辞儀と同じように一拍止めると所作が丁寧な印象になる。
「1~3」までの言動に多分2分もかからないでしょう。でもその中に前述したようなお客様を思っての所作が続くことを納得していただくと、新人さんは動き方が変わります。映像での振り返りは、どなたも真剣にご覧になります。「しているつもりがしているように映らない」のですから、ご本人には良い刺激です。今年は九州の男性の新人さんが画面を見て「お客様に近づくとき、自分では明るく近づいてきたと思っていましたが、こんなに姿勢もよくないし暗い印象だったとは、びっくりしました!明日からもっと気をつけます。」と驚いていました。ただ自分の映像をご覧になった方の感想の共通点は、自分の評価は一様に辛めです。自分の言動を客観的に見ることで、良くなかった点を指導内容の紙と照らし合わせながら、自ら改善しようと思えるようになります。もちろん良かった点は、たっぷり褒めて差し上げることが先です。