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戦略・戦術

第七十三話 顧客との信頼関係を築くための一枚のハガキと課題解決への取り組み

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは!1位づくり戦略コンサルタントの佐藤 元相です。
大阪府八尾市にある小さな特殊印刷業の会社があります。株式会社ニットープロセスといいます。1978年に創業し、特殊印刷とレーザーマーキングを主な事業内容としています。シルク印刷、パット印刷、曲面印刷、UV印刷といった特殊印刷や、金属などの高硬度材質への精細な意匠加工を行うレーザーマーキングを提供しています。

当社は、小規模ながら高付加価値な技術を保有していますが、商社やメーカーからのOEMを主軸とした下請け体制となっており、技術を広くアピールしたり、新たなプロダクト開発にチャレンジすることはありませんでした。

二代目の社長である川村さんは、自ら営業も兼務していますが、新規開拓にはほとんど手を付けておらず、親会社の業績に依存する経営が続いていました。このような状況を変えるため、川村さんは地元企業との交流を深め、経営の安定を図ろうと試みました。

まず注目したのが、地元八尾市の企業との連携です。八尾市ではファクトリズムという取り組みがあり、ものづくり企業が集まり、一般の人々に日本の技術を体感してもらうイベントを毎年10月に開催しています。川村さんはこのイベントに積極的に参加し、自社の強みを再認識しました。また、大阪の経営塾にも参加して戦略的な知識を深めていきました。

 

失注から学ぶ

ところが、昨年から依頼を受けた製品の見積もりが通らず、失注が続きました。従来なら失注は仕方がないと諦め、原因を探ることはありませんでしたが、川村さんは経営塾でのアドバイスを受け、失注先への訪問と原因を明確にするためヒアリングを行うことにしました。

まず、失注した案件の担当者に感謝のハガキを送りました。「平素はお付き合いくださりありがとうございました。今回お役に立つことが出来ず申し訳ありません」という簡単な内容でしたが、これが予想外の反応を引き起こしました。商社の営業担当者から連絡が入り、「提案内容や見積もりには問題がなく、私どもの総合的な提案力が不足していたことが失注の原因」と教えられたのです。

 

 顧客の課題を解決するための行動

川村さんはこの情報を元に、さらに一歩踏み込みました。商社の営業担当者に同行し、発注依頼者であるメーカーを訪問することを提案しました。現場で直接話を聞くことで、具体的な課題や要望を把握し、より的確な提案ができると考えたのです。

実際に現場を訪れると、メーカーの担当者からは様々な課題が提示されました。それに対して川村さんは、自社だけでなく地元の町工場との連携で対応できる可能性があることを提案しました。
数日後、再び商社の営業担当者と共にメーカーを訪れ、課題解決策をまとめて提案しましたが、すでに案件は他社に決まっていました。

しかし、この取り組みや技術的なアドバイスはメーカー担当者から高く評価され、今後の課題案件についても相談に乗ってほしいという依頼を受けました。

 

ハガキ一枚が生んだ信頼関係

この一連の取り組みを通じて、親会社である商社担当者との関係は大きく変わりました。従来の単なる下請けから、信頼されるパートナーとしての立場を築くことができたのです。また、メーカー担当者からも、開発段階からの相談案件が増えていきました。結果的に商社からの発注が増え売上も増加しました。

失注を放置する会社が多数を占める中、この会社は失注の原因を探求し、具体的な取り組みがより良い結果を導くこととなりました。

特に、感謝のハガキを送るというシンプルな行動が、顧客に対する感謝の意を伝えることで、相手からのフィードバックを得ることができ、その後の人間関係が深まり、パートナーとして顧客の課題解決へ取り組めることができました。

 

顧客と共に課題を解決する重要性

今回の取り組みから学べることは、顧客との信頼関係を築くためには、単なる取引関係を超えたコミュニケーションと課題解決への積極的な姿勢が必要であるということです。

価格だけにとらわれず、顧客の課題を共有し、その解決に向けて共に取り組むことで、長期的なビジネスパートナーシップを築くことができる可能性を導き出してくれています。

 

地元ネットワークの力を探究する

さらに、地元ネットワークを活用することで、他社にはない強みを発揮することができることも可能性の幅を広げます。地元の町工場との連携により、自社単体では不可能だった技術的な問題も、連携することにより対応が可能となり、顧客の信頼を高め得ることができました。このようにして、町工場は地域全体での価値創造を改めて探究することが求められると強く感じています。

 

失注案件にチャンスあり!

当社の取り組みから、下請け町工場でもまだまだ可能性があることを示しています。従来の下請け体質から脱却し、積極的に顧客と関わり、技術力を活かした現場からの提案を行うことで、新たなビジネスチャンスを掴むことができるのです。

失注を恐れず、その原因を探求し、具体的な改善策を協働で行う。その
姿勢が経営の安定と成長につながるのです。

 

株式会社ニットープロセス
https://nitto-process.co.jp/

 

 

 

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