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経済・株式・資産

第167話 喜憂併存の中国経済

中国経済の最新動向

 今年3月以降、欧米大手企業トップの中国訪問が相次いている。その背景には、セロコロナ政策の撤廃に伴い再び成長の軌道に乗る中国経済及び巨大な中国市場に対する外国企業の強い期待が伺える。4月18日に発表された今年1~3月期のGDP成長率や投資、消費、輸出の実績なども、多くの国際研究機関やエコノミストたちの予測を上回り、中国経済の復調ぶりを裏付けている。

 

 明るい材料が多い一方、中国経済に死角も少なくない。若年層失業率の悪化や耐久消費財の伸び悩みなど課題が山積している。期待と懸念が混在し、喜びも悲しみもある「喜憂併存」こそ、中国経済の真実の姿である。本文は中国経済の最新動向を検証する。

 

相次ぐ欧米大手企業トップの「中国詣」 

 ここ2ヶ月、欧米大手企業の中国訪問が相次いでいる。

 

 3月にはアップルのティム・クックCEOをはじめ、米大手ヘッジファンドのブリッジウォーター・インベストメンツ創業者、最高投資責任者メンター氏、クアルコムCEOクリスティアーノ・アモン氏、ブロードコムCEOホックE. タン氏、独BMWグループ会長オリバー・ツィプセ氏、自動車部品大手ボッシュグループ取締役会長ステファン・ハルトゥング氏、ZFグループ取締役会長兼CEOホルガ―・クライン氏、半導体露光装置世界最大手の蘭ASMLCEOウェニンク氏らが北京で開かれた会議に出席するために中国を訪れた。アップルのクック氏は「中国ではイノベーションが急速に発展しており、再び加速すると思う 」と述べた。BMWグループ会長のオリバー・ツィプセ氏も「中国はBMWグループの世界最大の単一市場であり、最も戦略的な意味を持つ市場の1つだ」と、中国市場の重要性を強調した。

 

 4月に入ると、上旬には仏大手企業のトップら50人あまりがマクロン大統領の訪中に同行した。そのうち、欧州航空機メーカー大手のエアバスは、中国航空器材集団(CAS)から小型機「A320」シリーズ150機と大型旅客機「A350-900」10機の計160機を新たに受注し、受注総額は約200億ドル(約2兆6700億円)にのぼる。

 

 中旬には米インテルのパット・ベルシンガーCEOが北京市を訪れ、中国事業への注力をアピールした。

 

 4月18日~27日に上海モーターショーが開幕し、日米欧主要メーカーを含む各国自動車メーカー1000社超が出展した。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツなど3大メーカーのトップがこぞって展示会場に姿を見せた。中国は世界最大規模の自動車市場であり、各国自動車企業の運命が中国市場での勝敗に左右されるからだ。

 

 企業経営者は景気動向や市場の動きに極めて敏感だ相次ぐ欧米大手企業トップの「中国詣」は、中国経済の復調に対する期待や中国市場に対する重視の現れにほかならない。

 

輸出は予想外の好調

 4月18日、中国政府は今年1~3月のGDP成長率が前年同期比4.5%と発表した。市場予想を上回る高いGDPを牽引したのは、厳しい行動制限に伴うゼロコロナ政策が終了したことを受けて観光や飲食など個人消費が大幅に伸びたことだ。予想外の輸出好調も第1四半期のGDP成長に大きく寄与した。

 

 中国税関の発表によれば、今年1~3月モノの貿易額は9.89兆元にのぼり、前年同期に比べれば4.8%増加した。うち、輸出8.4%増、輸入0.2%増だった。

 

 特に3月の輸出データは予想外だ。中国周辺の国・地域は、ドルベースでの3月輸出実績が台湾▼19.1%(7ヵ月連続減)、韓国▼14%(6カ月連続減)、インド▼13.9%、ベトナム▼13.2%、インドネシア▼11.3%と相次いでマイナスに転落している中、中国も▼7.1%と市場が予想していた。ところが蓋が開けると、同月の中国輸出は減少ではなく14.8%増加だった。人民元ペースでは23.4%増となり、第1四半期GDP成長率への寄与が極めて大きい。結果的には市場予想が大きく外れた。

 

 また、輸出先を国・地域別で見れば、これまで主要輸出先である日米欧向けはいずれも減少し、ASEAN、中南米、アフリカなど新興国・地域が大幅に増加するという輸出構造の変化が浮き彫りになる。中国税関の統計によれば、今年1~3月に対米輸出が1152億ドルで▼17%、対EU1260億ドルで▼7.1%、対日本408億ドルで▼2.4%だったのに対し、対ASEAN1390億ドルで18.6%増、対中南米559億ドルで0.5%増、対アフリカ417億ドルで19.3%増、対インド280億ドルで3.9%増、対ロシア240億ドルで47.1%増となっている(表1を参照)。

 

 日米欧合計2720億ドルで中国輸出全体の33.1%を占める。一方、ASEAN・中南米・アフリカ・インド・ロシア合計2881億ドルで全体の35.1%を占める。言い換えれば、新興国・地域向けの輸出が既に日米欧先進国向けを上回っている。新興国・地域向けの増加で日米欧向けの減少を補い、米国による貿易戦争の影響やバイデン政権主導の「デカップリング」によるダメージを最小限に抑えることに成功したともいえる。

 さらに、中国輸出の中身にも大きな変化が起きている。1~3月、電気自動車(EV)、車載用リチウム電池、太陽光発電用電池の輸出はそれぞれ122.3%、94.3%、23.6%と増えた。いずれも中国が世界をリードし、圧倒的なシェアを持つ新エネルギー分野の製品だ。輸出の「新三種神器」とも言われる。この「新三種神器」のシェアは輸出全体の4.7%を占め、前年同期に比べ1.7ポイントが増加した。今後、中国は自分の強みを発揮し、「新三種神器」の輸出をさらに拡大することが予想される。

 

若年層の失業率悪化は大問題

 輸出のほか、今年1~3月の消費と固定資産投資もそれぞれ5.8%、5.1%増え、中国経済の復調が鮮明になってきた。一方、死角も多い。

 

 まず、3月の輸出は確かに予想外の好調だが、この好調を持続させるには至難の業だ。アメリカをはじめ日米欧先進国の経済が景気低迷に陥り、需要減少に転じている。米中対立も激しさを増し、バイデン政権主導の「米中デカップリング」がさらに進んでいく恐れがある。ウクライナ戦争という地政学的リスクも無視できない。要するに、中国をめぐる外部環境が悪化するなかで、輸出の持続的な成長が難しい。

 

 2つ目は耐久消費財の伸び悩みだ。1~3月小売の売上高は5.8%増え、消費全体の1割を占める飲食店収入も13.9%増と大きく伸びた。その反面、耐久消費財である自動車は2.3%、スマホなど通信機器も5.1%と、それぞれマイナスに沈んだ。国民の消費意欲をどう高めるかが大きな課題となる。

出所)中国国家統計局の発表により。

 3つ目は若年層失業率の悪化だ。図1に示すように、16~24歳人口の失業率は1月17.3%、2月18.1%、3月19.6%と3ヵ月連続で悪化している。若者5人に1人が失業中という計算だ。これは社会安定を脅かしかねない大問題であり、どう解決するかが李強新首相の手腕が問われる。

 

 要するに、中国経済は今年の展望が明るい(通年5%成長)が、多くの難題も残っている。成長の道のりは平坦ではなく、紆余曲折が予想される。

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