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戦略・戦術

第七十七話 コロナ禍の「お客さまの声」を活かしたリストバンド通販会社の挑戦と成長~Amazonで出来ないことをやる!

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは1位づくり戦略コンサルタント 佐藤元相です。
創業17年目を迎える「GiG-BAND®(ギグバンド®)」は、沖縄に拠点を置いている、イベントで活用する使い切りリストバンド専門のインターネット通販会社です。音楽ライブ、クラブイベント、フェスなどの会場で、チケットバンドや整理券、参加証として使用され、業界内で確固たる地位を築いてきました。

 

しかし、コロナ禍において、あらゆる業界が未曾有の困難に直面する中、GiG-BAND®(ギグバンド®)も例外ではありませんでした。イベント業界の停止という厳しい状況下で、顧客との対話から新たなビジネスチャンスを見出し、成長を遂げた同社の取り組みをご紹介します。

 

北海道の市役所からの問い合わせがもたらした気付き

2020年、コロナウイルス感染拡大によってイベント業界が停止し、GiG-BAND®の売上は急減しました。そんな中、北海道のある市役所からの問い合わせが、同社にとって大きな転機となりました。

その内容は、「ワクチン接種会場で非接触の運用管理をすることはできないか?」というものでした。つまり、接種後の待機時間を個別に知らせる方法が必要だったのです。感染防止の観点から、会場で「何時に接種を受け、何分間待機すれば良いか」を、一人ひとりが自身で把握できる仕組みが現場で求められていました。

社長は、この問い合わせにピンときて、すぐに市役所の担当者に電話でインタビューを行い、詳細なニーズをヒアリングしました。この時の「非接触型の管理」という需要があることに気付きました。
これはいける!

 

新たな価値の創造

イベント用リストバンドから非接触管理ツールへの転用

このインタビューから得た気付きに基づき、GiG-BAND®は従来のイベント用リストバンドを「コロナ対策用の非管理接触証明のリストバンド」として再設計しました。

このバンドは、接種者が自身の待機時間を管理できると同時に、非接触で状態を確認するツールとして活用されるだろう。すぐに試作をつくり、自治体の要望に迅速に応えることで、新たな市場を開拓する第一歩を踏み出しました。

さらに、この取り組みは自治体だけでなく、大学や企業の健康管理にも活用できると仮説をたてて、サンプルづくりを進めていきました。

れが当たった!

 

大学の講義再開時には、学生がリストバンドを身につけることで、検温が完了していることを証明し、安心してキャンパス生活を送れる価値を提供しました。

こうして、感染対策の一環として非接触管理ツールが広がり、イベント業界以外の顧客層をも取り込むことに成功しました。

 

高速試行錯誤で市場の変化に即応

「考える前に動く。動きながら考え、改善する」これがGiG-BAND®が大切にしている思想です。北海道の市役所からの問い合わせを受けてすぐにリストバンドを改良し、新しい市場に投入するまでのプロセスを短期間で実施。さらに、他の業態にも応用できる可能性を見出し、すぐにアプローチを開始しました。

このような「高速試行錯誤」の姿勢が、コロナ禍という厳しい環境下でも成長を続ける力となりました。また、競争相手が市場に参入してきたとしても、「市場が拡大するのは好ましい」と捉え、他社の3倍のバリエーションを用意して顧客の多様なニーズに応えています。

 

Amazonではできないサービスを追求:現地訪問と対話の力

GiG-BAND®が特に大切にしているのは、「Amazonでもできないことをやる」という信念です。インターネット販売が主流の時代にも関わらず、同社は現地訪問や顧客との直接対話を重要視してきました。

毎月、東京のイベント企画会社や広告代理店など、実際に現場へ訪問し、顧客の課題を生の声で把握し、その場で解決策を提案することで、オンライン通販にはない付加価値を提供してきました。

また、取材の質を高めるために、振り返りと検証を重ね、効果的な質問の作成に力を注いでいます。このように、取材から得られた顧客の声を活かして新しいサービスを生み出す姿勢が、同社の競争優位を支えているのです。こうした背景があるからこそ、取材から得たお客さまの声から新たなイノベーションを起こすことに成功しているのです。

 

信頼関係を基盤とした持続的な成長

「GiG-BAND®(ギグバンド®)」の成長を支える最大の要因は、顧客との強固な信頼関係です。信頼は一朝一夕で築かれるものではなく、地道なコミュニケーションと寄り添いが必要です。

顧客との取材活動を年間を通じて継続的に実施。ただの業務的なヒアリングにとどまらず、担当者はプライベートな側面も含めて顧客と話をします。このような対話を通じて、ビジネスパートナーを超えた友人のような感覚が生まれ、顧客との距離が縮まっていくのです。

また、顧客へ送られる担当者からの手書きのハガキも活躍しています。各スタッフが沖縄の空や海、古民家や町など自分の好きな場所を撮影したものを絵はがきにしています。オリジナルの絵はがきです。

ハガキには、業務連絡だけでなく担当者の近況や個人的なエピソードも添えられます。「最近沖縄ではこんなことがありました」といった、親しみのあるメッセージが顧客の心に届くのです。

そうすると、東京のお客さまが沖縄旅行を計画した際、「せっかくだから、一緒に食事でもしませんか?」と誘われることもあるといいます。このような親密な関係性は、通常のビジネスでは得難いものです。心からの信頼関係があるからこそ、顧客は本音で課題や悩みを共有し、パートナーとして選ばれるのです。

このような細やかな心配りが、顧客との関係をさらに深め、信頼関係を長期にわたって維持する秘訣となっています。ビジネスライクなやり取りだけでは生まれない温かい絆が、同社のサービスへの愛着につながっているのです。

 

信頼関係を基盤としたアップセルの成功

強固な信頼関係があるからこそ、GiG-BAND®はアップセル(追加提案)も自然に行うことができるのです。顧客との対話を通じて、リストバンド以外のニーズや困りごとを引き出し、その解決策として新しいサービスを提案します。

たとえば、コンサート用のリストバンドの注文を受けた際、参加証明カードやフライヤーの印刷も一括で提供することで、顧客の業務負担を軽減します。

このようなアップセルは、単なる追加販売ではなく、顧客の課題解決を目的とした付加価値提供です。信頼関係があって初めて、顧客は他のニーズや困りごとを率直に共有し、それを解決する提案を受け入れてくれます。

 

まとめ:お客さまの声が未来を拓く鍵

GiG-BAND®の事例は、どんなに困難な状況でも「お客さまの声」に耳を傾けることの重要性を教えてくれます。

1.非接触管理という新たな需要をいち早く発見
  市役所からの問い合わせをきっかけに、リストバンドの用途を拡大し、新しい市場を開拓。

2. 友だちのような関係を築くことで、顧客の課題を本音で共有してもらえる。
  手書きのハガキを通じたコミュニケーションが、顧客との絆を深める。

3.現地訪問と対話でAmazonにはない価値を提供
  顧客との直接対話を通じて信頼を築き、迅速な問題解決を実現。

4. 高速試行錯誤で変化に即応
  市場の変化に素早く対応し、常に先手を打つことで競争優位を確立。

5.顧客の声をきっかけに新市場を開拓する柔軟な発想が成長を支える。

 

コロナ禍であっても、「お客さまの声」を活かすことで成長の道を切り開くことができる。GiG-BAND®のように、現場主義と柔軟な発想を持ち、変化を恐れず挑戦することで、未来は常に拓かれるのです。

 


GiG-BAND
https://gig-band.com/

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