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製造業

第303号 モノの捨て方で経営を改善したB社の事例

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所82】モノを捨てるとチエが出る。空間をつくるとアイデアが生まれる。(3)(188頁)

 「モノを捨てる」と簡単に言うが、汗水たらして稼いだお金を使って買ったモノを、そんなに簡単に捨てていいものだろうか?!先回の冒頭と同じ文章で今回の話を始めます。
 
 この疑問は的を射ています。しかしモノが捨てられないので、ただでさえ狭い職場はますます狭くなり、将来に対する準備など考える気にもならない…となってしまっては、もっと困ります。これが先回の話でした。
 
 しかし、ただ捨てるだけではやはり問題が起きます。もし何も考えずにそれらを捨ててしまったら、どういうことが起きるのでしょうか? 
 
 モノを捨てればその瞬間は職場がすっきりするでしょう。しかし、今回作ったり買ったりしたものが一年後にまた同じように使わないモノとしてドッサリ残ってしまい、また捨てるというのでは困ります。
 
 どうすればいいのでしょうか? 
 
 例えば、買い過ぎて使われずに残ってしまった部品がたくさんあるとしましょう。使い道はなく、場所をふさぐだけです。そして一向に減らず、それどころか少しずつですが増えているようです。
 
 そういう場合、その部品の前に、社長を筆頭に営業、設計、調達、技術、生産管理、経理、製造といった、その部品とかかわりのある人たちに集まってもらいましょう。
 
 その上でそれらのモノをみんなで見ながら、
 
 「これはいったい何?」
 
 「どうしてこんな状態になったの?」
 
 「みんなで一緒に解決しよう!」
 
といった会話をしていただきたいのです。
 
 先日B社でKZ法を実行しました。その時の、ある購入部品の前での会話です。
 
 社長「いつ来てもここに、この部品がたくさんあるけどどうしてだろう?」
 
 製造課長「ここ数か月は生産が無いので全く減りません。」
 
 営業部長「以前はかなり注文がありましたが、今後ほとんどこの部品を使う商品の注文は来ないと思います」
 
 製造係長「現場は置き場所がないので、苦労しています」
 
 調達取締役「ある程度は量をまとめて買わないと、価格が上がります」
 
 経理部長「一個がいくら安くても、これだけまとめて買うとかなりの現金の流出になりますから、もう少し小ロットで買ってほしいです」
 
 品質管理課長「古いのでサビが出ている部品があります。品質的に問題です」
 
 モノを見ながら、触りながら、指さしながらの会話です。それぞれの人がその部品に関してそれぞれのかかわりを持っていますから、いろいろな意見が出ます。いつも会議室ではあまり意見を言わない製造係長も、その日は大きな声で発言していました。
 
 結果ですが、その時そこにあった大半の不動部品を捨てました。一人では誰も決断できませんが、みんなが部品の前に集まってしゃべってみると、やっぱりこの部品は使えないという判断の一致があったのです。
 
 ラインサイドが急に広くなり、そこに製造部門がもう一つラインを作りました。その結果、量の多い製品を専用ライン化することができ、大幅な生産性向上と完成品在庫の削減ができました。
 
 そして、これまであまり連携をしていなかった営業部門と調達部門と生産管理部門が連絡を取りあうようになった結果、生産計画に合わせて小ロットで部品を買うようになり、これまで外部に借りていた倉庫が不要になりました。
 
 それらの改善の結果、キャッシュが大いに増え、経理部門が資金繰りが楽になったと大喜びしました。
 
 B社での物の捨て方は非常に良かったと思います。モノを捨てる時に議論をして全員が一緒になって活動すると、一部門単独では絶対不可能な大きな改善ができることが分かりました。そして空間が生まれると、それまで考えもしなかった発想が次々と生まれました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

303.jpg

copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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