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戦略・戦術

第五十六話 理想の人材との人間関係を築く方法 その3

中小企業の「1位づくり」戦略

ご近所人材の採用はストーリーチラシが効果的

 前回お伝えしたように「FUVSの法則」は、ブログや定期的な通信など様々な媒体で活用できますが、「ご近所人材」の採用に最も効果的だと考えています。「FUVSの法則」を具体的な形にしたのが、これからご紹介するストーリーチラシです。

 

これまでゼロだった募集が3回のチラシで23名の問い合わせに。

 セントケア静岡株式会社は新拠点として静岡県浜松市に看護小規模多機能の介護施設を立ち上げました。ハローワークを始め求人雑誌や新聞広告などさまざまな媒体にヘルパー資格者や介護福祉士などの求人募集を掲載していました。しかし、全く応募がありませんでした。

 

 静岡県の有効求人倍率は全国でも、高い水準にありました。また、浜松市はヤマハをはじめ、バイク、自動車工場や精密機械部品などを製造加工する町工場が多数あり、期間工をはじめ、アルバイトや正社員の求人募集は競争率が高く、時給や月給もほかのエリアよりも高い金額で推移している地域です。

 

 当時、自動車工場は期間工のアルバイトを、介護職の2倍から3倍も高い給料で募集をしていました。

 

 介護施設の採用担当者は「うちは他社と比べて時給が高いわけでもなく、また、これといった特徴があるわけでもありません」と採用難の高い壁に対して、どのように手を打てば乗り越えられるのか?活路が見いだせずにいました。

 

 「時給を前面に出せば、他社と比べて2倍近い給料の格差がある」

 

 これでは勝負になりません。従来の採用のやり方だけでは人材を確保することが難しい状況でした。そこで、弱者の差別化採用戦略に取り組むことになりました。

 

 まずは、現在、職場で働いているスタッフの中で求めるイメージに最も近い人は誰なのか、職場の方々にヒアリングをしました。すると、「小野田朱美さん(仮名)」の名前が上がりました。

 

 彼女は家事と子育てを両立させ、キャリアを重ねてマネージャーになり、現在は施設の責任者として働いています。とても明るくて向上心のある人で施設でも人気の高いスタッフです。

 

 そこで、この小野田朱美さんを「来てほしい理想の人材像」と決めました。

 

 次に求める技術・技能・人柄の決定です。ヘルパー2級の資格を取得している方で現場経験があり、協調性やチームのコミュニケーションを大切にしてくれる人を対象とすることにしました。

 

 最後に求める人材の暮らしている地域募集するエリアの決定です。短時間のパートやフルタイムで働いている方々の居住地をヒアリングして地図に記してみると、ある一定のエリアに集中していることが分かりました。

 

 それは、施設近隣の学校区エリアでした。

 

 小野田朱美さんは、子育てしながらヘルパー2級の資格を取得していることから、施設から近い幼稚園や小学校のある地域を重点地域と定めて3つの町で求人募集を行うことにしました。

 

 理想の人材像が決定したら、次は新しい人材募集のやり方です。セントケア静岡では、地域の求人情報雑誌や求人サイトなど募集ツールを活用していました。しかし、これらの媒体には表現に制限があり、「仕事・資格・時間待遇・休日・勤務地・応募」など記載項目が限られていました。

 

 そこで手紙風の手書きのチラシを使い、人材を募集してはどうかと考えました。

 

 子育て中の方を対象に絞り、なじみの良いものはないか考えると、幼稚園や保育園の運動会や遠足などでいただく資料に似せたものがあれば親和性が高いだろうと判断しました。

 

 そこで、クレパスで書いた手紙のチラシを考案しました。

 

 チラシは、新聞折り込みチラシと直接ポストに投函するポスティング、どちらかを選ぶことになりました。新聞の購読者数は14年連続減少しており、特に30代から40代は電子版の影響もあるのか、読者数の減少が著しいのが現状です。

 

 以上のことからポスティングでクレパス調の手書きチラシを採用することにしました。

 

 チラシは感性マーケティングの「FUVSの法則」を使い、3回連続のストーリーを作り配布することにしました。

 

 第1回目のストーリーチラシができました。

 チラシのポスティングは施設近隣の学校区8000世帯に決めました。

 

 一回目は、小野田朱美さんの「自己紹介」と、F(ファミリー)」と、「選ばれる理由」をテーマにしました。

・3人の息子を持つ主婦

・出産したあと、ホームヘルパー2級の資格をとった

・職場の勤務体制は子ども優先

・職場の人間関係の良さ

 

 求人情報雑誌には書けない、「働きやすさや」や「やりがい」を中心に、共感を得られるようなストーリーにしました。

 

 

 2回目のストーリーチラシはF(ファミリー)と、V(バイタル=一生懸命に頑張っていること)をテーマにしました。

・3人の息子のこと

・子供の習い事や送迎について

・先生のお手伝いにスケジューリング

・頑張るお母さん

をイメージして作りました。

 

 習い事への関わりが増えたこと、自分のことのように活動している様子がよく分かります。毎日がとてもアクティブですね

 

 

 最後の3回目のストーリーチラシは採用の告知です。

 小野田朱美さんの体験から「子育て」「キャリア」「女性の自立を応援する会社であること」をストーリーで描きました。

 

 さらに、過去のチラシで得たお客様の声を活用しました。

・私にも何かできるかなと思い連絡をしました。

・資格がないけど大丈夫かしら

 

 小野田朱美さんの体験や生き方に共感していただいている方々に呼びかけるようにストーリーが描かれています。

 

 最後は「えいや!」と飛び込んできてほしいという気持ちを持って、説明会に参加してもらいたいという願いを感じますね。

 

 採用募集の結果は1回目のチラシを見て、「私にも何かできるかなと思って連絡させていただきました」と4名の方から連絡がありました。その他「絵が柔らかくていいですね」とか「職場が楽しそう」といった声もいただきました。

 

 2回目のチラシには、2名の方からお問い合わせをいただきました。どちらの方も働きやすそうな職場だという印象を持ってくれたようでした。

 

 3回目のチラシを見て、会社説明会にはヘルパー2級の資格を持った方だけではなく、看護師の方を含め、10数名の方が参加してくれました。

 

 結果この3回のチラシで23名の問い合わせがあり、計画していた人材を採用することができたのです。

 

 競争が激しく、あらゆる人材募集を行っても、問い合わせはとても少ないエリアですから、働いてほしい人材にぴったりの人からの問い合わせや応募に採用担当者も驚いていました。

 

 しばらくして、採用担当者の方から「チラシを見て採用した方は定着率が高く、やる気をもって現場で働いてくれている」と連絡がありました。

人材採用に手応えを感じているようでした。

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