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社員教育・営業

第6号 “経営が厳しい会社”の全員営業の活用法【実践編】

社長のための“全員営業”

 

 経営が厳しい会社は、業績不振の状況すら逆手にとって浮上すべし

 
 第6回コラムでは、経営が厳しい(≒業績不振)会社が、どうすれば、現有戦力の結集に成功するか、そのポイントと始めの一歩についてお伝えします。
 
 経営の舵取りを大きく分けると、トップダウンかボトムアップに分かれます。マスコミの報道や成功事例では、現場からのボトムアップの方が、多くの人が共感しやすく、ストーリー性もあるため、紹介されやすいものです。
 
 しかし、非常時において、大きな方針転換と現場の痛みを伴う変化が必要なのに、ボトムアップにこだわってやっていると時間ばかりかかって、時機を逸します。
 
 また仮に、現場から妙案のきっかけが出てくることがあっても、社長に上がっていく過程で消滅したり、発言者の影響力が小さくて相手にされず終わることや、いくら会議で検討を繰り返しても提案が出てこないことすら、考慮する必要があります。
 
 しかし、悪いことばかりとは限りません。経営が厳しい会社は、外から眺めると八方ふさがりに見える場合もありますが、内から観察すると改革に向かうための下地が揃っているからです。
 
 その下地とは、大なり小なり、「全ての社員に、〝今のままいくと、会社はマズイ“」という認識があるということです。
 
 ゆえに、今やっていることの何かを変えないといけないという共通意識は持っています。
 
 ここで経営者の多くは、何か妙案があるなら言え、あるいは、自分たちで良案を考えて実施しろ、とやってしまうのです。
 
 もし、会社で、経営者がそう発言したのが、初めてであれば、意見や新たな動きが出てくる可能性は十分あります。
 
 しかし、過去、何回かそういうことがあったとすれば、その時に、どんなことがあったかが、当事者の記憶にこびりついています。
 
 意見を出した人に、社長や経営幹部から「お前が上手くいくと思うなら、やってみろ」
 「言い出しっぺがやらずにどうする。お前が責任をもって実施しろ」
 「本当に、それをやれば、うまくいくのか。100%保障できるのか」
 「なぜ、いまになって言うんだ、もっと早く言えなかったのか」
 「彼がこんな提案しているのに、部長のお前からは、なぜ、何も出てこない」
 
・・・等々、どれか一つくらいは、思い当たることがありませんでしょうか?
 
 要は、過去に意見を出した人が、割を食ったのを見ているのです。あるいは、発言したばかりに、その組織の中で居心地が悪くなった経験があるのです。
 
 ゆえに、経営が厳しい会社では、社長自らが、「いまのままでは〝ヤバい“」のでなんとかしたいという社員の建前と同時に、火の粉をかぶってまで口火を切るのは勘弁してほしいという本音に即した始めの一歩を整えることが肝要です。
 
 ある顧問先では、2回続けてミーティングをやっても提案が出なかったことがありました。
 
 ならば、どうしたか?
 
 コンサルタントの私から社長に直接、『結局、業績が上がらなくて一番困るのは誰ですか?、社長ではありませんか?』という話をした上で、『営業幹部からも、現場からも意見が出ないならば、一番状況に困っている人が案を出して、先頭に立ってやり始めるしかないでしょう』と、社長と2人で方策を考えた後に、社長自ら全社員の前で、自らの言葉で発表をしました。
 
 そこに至って、ようやく過去2年近くに渡り、新しい動きをとらなかった営業現場が変わり始めたのです。
 
 社長の本気度と、社長が言い始めたことだからという、建前と本音の両方に納得のいく状況が整ったからです。
 
 他にも幾つか重要なポイントはありますが、営業の組織も現場も、中々変わっていかないという会社に最も欠けているのは、この1点です。
 
 現有戦力をすべて結集し、同時かつ同じ方向に向けて動かそうとする場合、いくら営業部全体や営業部長が現場に働きかけたり、仮に助けてくださいと頭を上げてお願いしても、全社一丸になるまでには至りません。
 
 その証拠に、過去の経営史や歴史において、非常時を跳ね除けて、大逆転できた組織は、99%といってよい確率で、『大将が前線に出て、全軍を鼓舞する』、『組織のトップから、妙案が出て、それを現場が信じて実行に移す』、『最終責任は、主将が背負う決断を下して全軍の力を結集する』のすべてか、あるいはいずれかが行われているのです。
 
 時間が経過するごとに、打てる手が限られるような非常時において、「部下を信じて、全面的に任せる」、「自ら発言せず、流れのままに様子を見る」、「部下の意見と名前のもとに、事に当たる」では、現有戦力を束ねることは不可能なのです。
 
 一定規模までの中堅企業においては、真にリスクをおった意思決定ができるのは、トップである社長だけです。
 
 経営における非常時ほど、最初の改革の道筋は、トップダウンで作るのが業績を上昇に転ずる秘訣です。また、厳しい中にも、数少ない好材料として、過去のやり方からの脱却が理解される状況にあります。
 
 実際に、全員営業にもっていくのが難しいのは、経営が厳しい会社よりも、経営が順調な会社の方なのです。次回は、その経営が順調な会社の全員営業の活用法についてお伝えします。
 
 
 ・今回のポイント(〆の一言):
 全員営業は、単なる人材活用にあらず。会社にある全ての物品も活用しようと試みるだけでもなく、不利な状況さえも業績向上の営業力として活用する。
 

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