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<事例―31 キッコーマン(B2CとB2B)>日本の伝統的な調味料であるしょうゆを世界に広げ、営業利益における海外比率が7割を超えるまでになった世界的ブランド・・・それが「キッコーマン」だ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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●アメリカ人が好む利用方法を考案して、市場を開拓
 
 しょうゆや味噌といった日本の伝統的な食品を製造販売する老舗企業は、国内だけで事業展開するのが一般的だ。だが食の洋風化と少子高齢化が進む日本では、国内だけでは市場が拡大する余地は今後限られてくる。
 
 こうした中で、早くから海外市場の開拓に乗り出し、現在では世界100ヶ国以上に進出して成長している老舗企業が存在する。キッコーマンだ。
 
 同社は1957年にサンフランシスコに販売会社を設立し、アメリカでしょうゆの需要創造に着手した。
 
 同社は和食や日系人の需要だけでなく、市場を拡大するにはアメリカ人の食卓で日常的にしょうゆが使われる必要があると判断し、その方法を模索する。当時のアメリカで日本料理はまったく普及しておらず、食文化が異なるアメリカでしょうゆの必要性は理解されなかった。
 
 そんな中でキッコーマンに勤務する日系二世のセールスマンだったタム吉永氏は、母親の手料理として慣れ親しんでいた魚の照り焼きをヒントに、肉料理に合う醤油ベースの料理法として「テリヤキ」を考案。
 
 キッコーマンが主催する料理教室や販売促進用の小冊子を通じて、テリヤキソースの調理法を地道に訴求し、アメリカに定着させていった。時間は掛かったが、「テリヤキ」はアメリカ人の間に定着し、現在アメリカで消費される醤油の用途の大部分が「テリヤキ」になっている。
 
 製造面では1973年に原料処理から製品化までを一本化して、アメリカでの現地生産を開始。現在同社の海外しょうゆ事業の売上高では、北米地域が70%近くを占めるまでに成長している。
 
 
●ローカライゼーション(現地化)による新規需要の創造
 
 欧米企業は海外に市場を展開する際、自国の文化や商品仕様を変更せずそのまま導入することが多い。
 
 だが食に関しては、国や地域によって食文化が異なり、宗教上の理由から口にできない食材や調理方法が存在するため、世界で一律に展開する方法(グローバリゼーション)が成功するとは限らない。
 
 キッコーマンはアメリカでの実績をもとに、海外ではその国の人たちの食嗜好に合わせて「現地化」するモノづくりとマーケティングを実践し、新規需要を創造している。
 
 例えばイスラム教徒の多いエリアではハラル対応の商品をつくり、タイのように甘辛い味が好まれるアジアではテリヤキソースの拡販に注力するといった具合だ。
 
 
<「キッコーマン」の事例に学ぶこと>
 
 人口が減少する国内市場だけで成長が見込めないと、海外に市場を求める日本企業は多くなる。
 
 海外で新規需要を創造しブランド力を発揮するには、日本での使用方法や用途をそのまま海外でも展開する方法と、現地の人たちに最適な用途を考え出して展開する方法という選択肢がある。
 
 競合他社にない魅力をアピールして市場で優位性を発揮するには、やはり現地化する発想が必要になるだろう。和食が世界で知られ、外食需要が増えたとしても、独自性を発揮しないと競合他社との違いが明確化しないからだ。
 
 フランスではフランス料理のソースに味噌を使うシェフが増えているが、こうした用途は日本では見られない傾向だ。新たな用途や需要をいかに高めていくか。他社にはない独自性が、ここで問われることになる。
 
 
 
 
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