私は40年間、一貫してずっと会社経営における「人の問題」に関わってきました。
日本経営合理化協会では、これまで13年にわたり、セミナーや塾を通じて、社員数わずか5名の会社から店頭上場の中堅企業まで数百社の会社を 強くするために、尽力して参りました。
ご相談される経営者からは、会社の業種業態や規模に関わらず「会社を引っ張っていくマネジメントの出来る人が 育っていない。」または
「自分の言った事が社員のすみずみまで届かず、会社の方針が中々伝わらない。そのために、事業計画が計画通りにい かない。」
…などそのほとんどは「ヒトの仕組み」がないための嘆きです。 特にここ数年は、「ヒトの仕組み」がないまま経営を続けてこられた経営者が、ヒ トの問題で会社が活性化せず、その結果、世の中の変化に対応できず、売上が伸びず困っておられるケースが非常に多いものです。
私は、かつて西尾レントオール株式会社という会社に33年間勤務し、社員数53人の中小企業から1200人の大証一部上場企業に成長させる 「仕組み」を西尾晃先代社長と二人三脚でつくりあげました。
(西尾晃社長は西尾レントオールの創業者で93年に他界され、現在はご子息が立派に後継され躍進しており、文章中は先代社長と記させていただき ます。)
1970年に私が入社した当時、道路工事などの建設機械を主としたレンタル業を営んでいた西尾レントオールは、先代社長が公認会計士で税理 士、司法書士、中小企業診断士などの資格を有し、経営には絶対の自信を持っておられました。
しかし、1973年のオイルショックという外部環境の変化が起こった時、自社の機械を切り売りして生き延びるという瀕死の状態に陥りました。 社長は毎日毎日、一生懸命考え抜かれたあげく、ある日、当時 人事部長であった私を呼びだされ、
「わしは、経営には絶対の自信を持っておった。しかし、外部環境の変化で会社がこんなにもガタガタになるなんて言語道断や。
今回何とか乗り越えたとしてもまたいつか来るぞ!どうなことがあろうがビクともしない“強い会社”をつくらなあかん。それには、人 や。
人こそすべてや!“任すから任せるに足りる人”を育ててくれるか?」
と言われました。今まで先代社長はワンマンで、人に仕事を任すような人ではなかったので、驚き、「本当に任されますか?」と聞き返したとこ ろ、
「任せるに足りる人やったら任すで。まだ任せるに足りないから、俺がやいやい言うんや。」
「なるほど。では、社長の考える任せるに足りる人とはどんな人ですか?」と聞くと、即座に
「今日いついかなる時に、何らかの形で当社を辞めなければいけないことがあったとしても明日から独り立ちしていける人や。そういう人を創ってく れ。」
「そんなことしたらその人は会社を辞めますよ。」
「いや、そうなったとしても、やめんような仕組みを創ってくれ。」
この大命題が下されて以来、私の苦闘が始まったのです。
これから数回にわたり、私がこの「人づくりの仕組み」に取り組む中で、先代社長から学んだことを、お伝えすることにより、皆様の今後の経営の参 考となればなによりも幸いです。