たび重なる会社のスキャンダル、背後にある根本原因は環境変化への対応ができないことにある、と郷原総合法律事務所所長で元検事の郷原信郎弁護士は強調する。同氏は総務省のコンプライアンス室長、九州電力第三者委員会委員長などを務める等、危機管理のエキスパートである。
環境が変化すれば社会のニーズは変わる。当然ながら企業の対応も変わらなければならない。しかし、それがなかなかできない。バブル崩壊後のような、急速に価値観が変わってきている激動期には不祥事が起きやすいし、3.11を受けて今後は更に多くの問題行動が出てくるだろうという。コンプライアンスというのは単なる法令順守ではなく、社会の要請に対応するということで、むしろ後者の要素が強いかもしれない。
例えば九州電力の「やらせメール」事件。「これは3.11以前だったら余り問題にならなかっただろう。ところが3.11以降、社会は電力会社が安全だといってももう信じない。本当に安全かどうか政府のお墨付き、更にはもっと客観的な機関の判断を求めているのに、原発再開を判断すべき知事と九電が結託したとみなされた。これがこの不祥事の最大のポイントで、法律は破っていなくても問題なのだ」という郷原氏の説明は説得力がある。
社会のニーズに対する感受性を強めることは後継者教育にとってもまた重要なのである。
では家族に対するスキャンダルにはどう対応したらいいか。代々続く資産家、ファミリー企業のオーナーを見ていてつくづく感じるのは「目立つことがないよう多大の努力を払い、ロープロファイルに徹しているナ」ということである。法を犯さずとも、マスコミ、大衆紙や週刊誌に書きたてられたのではろくなことにならないので、マスメディアの注目を集めないようにするのである。
不動産、美術品、歴史的文書などを買うときは名前がでないように個人会社(ペーパーカンパニーを含む)や信託を利用する。
子供の非行、離婚、訴訟などのスキャンダルに対してはあらかじPR会社や危機管理会社を雇い、いざというときさっと対応して貰えるようにしている。対マスコミを含めて初動体制がいかに大事かを熟知しているからである。勿論会社のスキャンダルについても同様である。いずれにせよ、会社であろうと、家族であろうと「ガバナンス、情報開示、説明責任重視」が時代の流れのようである。
榊原節子