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後継者

第49回 成人した子供とのつきあい方

欧米資産家に学ぶ二世教育

成人した子供とよい関係を結び、自分たちの死後も兄弟姉妹が仲良く助け合ってくれたらと、親なら皆そう願う。良好な家族関係は人生後半からの幸せ、またスムーズなファミリー企業や資産の継承にとっても肝要である。

ところが日本では「家族は放っておいても親しいもの」という考えがあり(実態からは離れていると思うのだが)、成人した子弟と緊密なコミュニケーションをとる努力をしない(できない)傾向があるのではないだろうか。同じ家に住んでいてもほとんど話をしないケースだってあり、特に男性にこの傾向が強いように思われる。

仲の良かった兄弟姉妹でさえ、結婚とともに疎遠になり、なかにはいがみ合うケースも数多く、その後の相続時に更に対立姿勢を強めたりする。これが一族に拡大すれば、祖父母亡きあとは散り散りになってしまう場合とてある。

決してすべてでとは言わないが、欧米の代々続く資産家、ファミリー企業のオーナー達はファミリービジネスの存続や、一族の資産を守るべく、ファミリーのコミュニケーション促進の仕組みづくりに腐心し、そして活用する。こうした努力は資産の多寡にかかわらず、私たちも見習うべきではないだろうか。

具体的にはどのような仕組みがあるのかと言えば、第一に家族会議である。私の友人のバーバラは子供に小遣制度を施き、そのフォローアップを含め定期的に家族会議を開いていたそうだ。そこで親子はお金の使い方、小遣いとセットになっている「手伝い」、その他「服装」などなんでも話し合う。親は子供を褒め、注意し、時には子供から反撃を食らう。

「今月はちゃんとお金のやりくりが出来て偉かったね、貯金もできたし」「小鳥のえさを忘れたのはまずかったね、小鳥は死んでしまうかもしれないよ」「死んだらどうなる?」と言った具合である。

子供の方からの要望や不満もあるに違いない。「手伝いが多すぎるよ、友達なんて手伝い何にもしないのに、小遣いは僕より多いんだ・・小遣いもっと増やしてよ!」などなど。「よその家はよその家、我が家の方針は手伝いをすることなんだ。手伝いをすることで大人になったとき助かるんだよ。みてごらんお父さんは料理だって作れるし、アイロンもかけられるだろ・・・・」「あんまり上手じゃないじゃないか、それに僕はまだ子供だから・・・」と逆襲にあう。

きちんと理論的に組みたてた発言を日本人は苦手とする。反対されると自分の人格まで否定されたようにやたらと攻撃的になるなど、国際会議ですらそうした欠点を目にすることが多い。家族会議は、「異なる意見のなかで自分の主張を整然と述べ、かつ他の参加者との意見調整をはかる能力」を身につける訓練の場となる。筋道をたてて主張を展開し、相手の反論に対する臨機応変な対応を習得することは社会人として大いに役立つ。家族全員がそうした会得をすれば将来の争いを未然に防ぐことができるのではないだろうか。同族経営にあたっては特に有用である。

一定の年齢になると子供に「家族や一族の投資会議」への出席を義務付けるファミリーもいる。成人後も何をおいての出席が求められるのである。将来手にするであろう資産をどうするか、銀行との折衝ノウハウ、不動産を含めた資産の分散、ファンドマネージャ-の使い方、発表能力、交渉能力、時にははったりをかませる演技力など広範な実学を学んでいくのである。

私たちも「寄付会議」「家族旅行を決める会」など始めてみたらどうだろうか。目的はなんでもいい。家族、可能なら一族が集まる機会を設けるべきだと思う。親子、兄弟姉妹とて性向、信念、拘り、みなまちまちであるから、考え方だって違うのが当たり前。ましてや家族のみならず一族と広げていけば皆の意見が一致する方がおかしな位である。その異なる意見や時には互いの感情的反目をどうマネージしていくかを練習する。更に家族がたがいの能力や資源を提供しあうことを学べば、ファミリーの未来は明るい。

 榊原節子 

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