今回は改正労働契約法、特に有期労働契約者の無期労働契約への転換の問題を取り上げてみたいと思います。
有期労働契約の適正な利用のためのルールとして2012年、改正労働契約法が成立、「(1)雇止め法理の法定化」については、2012年8月10日公布の日から施行され、企業にとって新たな負担となる改正部分「(2)無期労働契約への転換」および「(3)不合理な労働条件の禁止」は、2013年4月1日から施行となりました。
この法改正で最も重要な内容は、「(2)無期労働契約への転換」であり有期労働契約が繰り返され、通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるという点です。
有期労働契約は、嘱託、準社員型契約社員、パート社員、アルバイト、期間労働者をはじめ、いわゆる正社員以外の労働形態に多く見られる労働契約の形式であり、有期労働契約で働く人は全国で約1,200万人と推計されています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2013年11月に実施した調査によると、改正労働契約法の認知度は、「改正内容まで知っている」が63.2%で6割を超えていますが、「改正されたことは知っているが、内容はよく分からない」が30.4%でした。
対応方針では「未定・分からない」がもっとも多く37%、これに次ぐのは「通算5年を超える有期契約労働者から、申込みがなされた段階で切り換えていく」が28%、「通算5年を超えないよう運用していく」が14%程でした。実際に無期転換が生じるのは2018年4月以降ということもあり、詳しい情報収集はこれからという企業も多いのではないでしょうか。
中には「更新を5年繰り返した場合は正社員にしなければならない」といった誤解もありますが、無期労働契約への転換の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。別段の定めをする場合、職務内容が変わらないのに労働条件を従前より低下させることは望ましくないと通達されています。
正社員あるいは無期契約に転換させても良いと考える企業の割合はフルタイムの契約労働者では70.0%、パートタイム契約労働者では55.6%となっています。
無期契約になるからと言って、正社員に登用しなければならない訳ではないのですが、正社員以外の無期労働契約を幾通りも設けることの煩雑さを避けたいとの考えから、企業は「通算5年を超えないよう運用」と併せて、勤務成績「B」以上と評価できる有期契約者については初級職(I等級)の正社員として雇用を考えることになるかも知れません。
事実、正社員への登用については「能力によっては登用」あるいは「一定期間を超えたら登用」するとの答えが多く、すでにそうした登用実績があると相当数の企業が回答しています。