「仕事のすすめ方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
前回は、私が自分の耳で聞いた受け手の第一声で残念ながらマイナスの印象の例をあげました。
電話の受け手になったとき、そのようなつもりがないのに起こってしまう例がほとんどでした。そのようなひとつひとつのことは、ひとつひとつに対応するスキルで解決します。解決だけではなく、好印象にかえることも可能なのです。
あなたが受け手であっても掛け手であっても、電話応対は話し言葉を使うということを頭に入れてください。話し言葉であるということは発声・発音が基本です。日本語の特徴は一音一音の言葉のうしろにすべて「ア・エ・イ・オ・ウ」の母音が隠れています。その母音の形に口を開閉しています。たとえば「おはようございます」は「おオ・はア・よオ・うウ・ごオ・ざア・いイ・まア・すウ」のように。この母音の口のかたちを意識するだけでも相手に伝わる明瞭さが大分かわります。
研修が始まると、まず参加者に「おはようございます」とご挨拶をいたしますが、参加者も皆さんで「おはようございます」をかえしてくれます。電話応対の研修のときは、発声練習が済んだところでもう一度私は「おはようございます」を皆さんに申し上げます。このとき「おはようございます」をおっしゃった皆さんの顔が少し驚いた表情になります。
というのは、自分では先ほどと同じように言ったつもりなのに、より明瞭な「おはようございます」になっていることに気付くからです。
《口の開閉トレーニング》
ア エ イ ウ エ オ ア オ カ゜ケ゜キ゜ク゜ケ゜コ゜カ゜コ゜
サ セ シ ス セ ソ サ ソ タ テ チ ツ テ ト タ ト
ナ ネ ニ ネ ネ ノ ナ ノ ハ ヘ ヒ フ ヘ ホ ハ ホ
マ メ ミ ム メ モ マ モ ヤ エ イ ユ エ ヨ ヤ ヨ
ラ レ リ ル レ ロ ラ ロ ワ エ イ ウ エ オ ワ オ
ガ ゲ ギ グ ゲ ゴ ガ ゴ カ ケ キ ク ケ コ カ コ
ザ ゼ ジ ズ ゼ ゾ ザ ゾ ダ デ ヂ ヅ デ ド ダ ド
バ ベ ビ ブ ベ ボ バ ボ パ ペ ピ プ ペ ポ パ ポ
息は腹式呼吸。お腹に吸い込んだ息を少しずつ吐き出す感じです。声帯のところは息を通過させるくらいの気持ちでお願いします。鼻濁音の「カ゜ケ゜キ゜ク゜ケ゜コ゜カ゜コ゜」は、「ン」と「ガ」を同時に言うように発声してください。濁音と鼻濁音の使い分けは「学校」の「ガ」は濁音、「小学校」の「が」は言葉の途中にあるので(言葉の終わりにある時もですが)鼻濁音の「カ゜」です。「私、松尾が承りました」の「が」も鼻濁音です。相手にとどく響きがやさしくなります。
さらに日本語の特徴はイントネーションの高低(英語は強弱)です。自分の声帯の中で声の高低がうまく調節できるようなトレーニングを紹介しましょう。
《珍客》 高村光太郎
(高)鬼がでるか、蛇がでるか
(低)それが分からない珍客なんだ
(高)一度来たらもう来ないという
(低)そういうひょうきんな珍客なんだ
(高)前ぶれだけ聞いても胸のせいせいする
(中)飛び切り生きのいい珍客なんだ
(低)大胆で晴れやかで やさしくて
(高)だれにでも話しかける珍客なんだ
それぞれの行の「高・中・低」は、無理をしないで出せる自分の声の音程の範囲で調節してください。一音目から指定の音程が出せるように練習しましょう。顎を動かして音程の調節をするのではなく、声帯を響かせて共鳴させる音を調節します。これがうまく出来ると、センテンスの抑揚が表現しやすくなります。相手に伝えたい言葉が届きやすくなります。
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