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- 第70回 『感動力の教科書~人を動かす究極のビジネススキル~』(著:平野秀典)
秋とは思えない寒さが続くこの頃。
とある会合の場で、
「この秋を象徴する言葉は何か?」という話題が出た際、
多く聞かれたのが"劇場型"という言葉です。
たしかに"劇場型政治"や"劇場型選挙"、
といった言葉をこの数ヶ月内に、たびたび見聞きしました。
"劇場型犯罪"という言葉も普通に使われ、
すっかり良くないイメージで定着しつつある印象ですね。
しかし、本来、劇場は人々の感動と熱気があふれる場。
そんな負の言葉で語られるものではないはず。
それどころか、
「優れたビジネスコミュニケーションは、一流の舞台に似ています」
とあるのが、今回紹介する
『感動力の教科書~人を動かす究極のビジネススキル~』平野秀典(著)
です。
では、ビジネスと演劇がどう似ているかというと、
たとえば、
・伝えたいことを時間内にドラマティックに伝える
・もっと話を聞いていたい、この場にいたいと思わせる
・聴き手の心が動かされる
・その場に一体感が生まれる
・いい余韻が残る
といった点。
そして、著者が考える「劇場型」とは、
仕事の場を劇場の舞台と想定し、感動を生み出す演劇の手法を
ビジネスに応用する試み、とのこと。
ゆえに、使用するビジネス用語も以下のようになります。
戦略 → シナリオ
戦術 → 演出
戦力 → 営業力(表現力)
ターゲット(=お客) → 共演者
たしかに、ビジネスの場で日常的に使われている用語は
どういうわけか、戦争用語が多いですよね。
それも何の違和感も使っています。
よくよく考えてみたら怖い話です。
「分離を生み出す戦争用語から、信頼を生み出す演劇用語へ」と
文中にもありますが、日ごろ使う言葉をほんの少し変えるだけでも、
社員の気持ちが変わっていくような気がしてなりません。
「プレゼンも商談も、日常のコミュニケーションも、
人に価値を伝えるために最も大切なものは、
テクニックではなくハート(心)です」
「商品や人や企業が持つ本来の価値が伝わり、
人が自ら動きだす表現力―」
著者はそれを「感動力」と呼んでいます。
感動する商品はヒットし、
感動する接客はファンを増やし、
感動するプレゼンは人を動かし、
感動するリーダーには才能が集まる。
本書では、「ツタワル表現力」×「ツナガル共感力」×「ツクル創造力」
という切り口から、これからのビジネスのカギがわかりやすく語られています。
文字通り、新しいビジネスの「教科書」となるような
工夫とアイデアに富んだこの一冊、さっそく読んでみることをオススメします。
うわべのテクニックとは違う、"心の技術"をぜひ手にしてください!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『モーツァルト:ピアノ協奏曲第25&27番』
(フリードリヒ・グルダ(ピアノ)、クラウディオ・アバド(指揮)、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(演奏)
モーツァルトの名曲、一流揃い踏みでの名演。
特に、テクニック以上に心を感じる、フリードリヒ・グルダの"伝わる演奏"に注目。
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。
100の立派なことを言う人より
1の大切なことを実践する人が、
人を幸福にします。