今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第4項目である『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』に関してのお話を致します。
- ホーム
- 売れる住宅を創る 100の視点
- 第70回 スラブの厚さは最低20センチ以上必要
前回はフェーズ8の「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ハード面の重視 』の大切さを認識して戴く目的でこのコラムに於いて25項目用意致しました中の、第3項目の『 外階段は鉄筋コンクリート造が良い 』の御説明を致しました。
今回はその第4項目の分譲マンションのハード面の良し悪しに依って特に売主の会社の「 モノづくり 」に対する姿勢が問われる遮音性や耐久性に関して認識して戴く為に『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』という内容を、皆様に詳しく御説明致します。
さて、今回も建築家として、私が最も得意とする「 モノづくり 」における重要な「 こだわり 」の御説明であります。
今回も、分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主が入居者( 購入者 )サイドに立った商品を製造・販売しているか否かが購入者にとって大きな価値判断基準になりますので、私の今迄の経験を通して御説明を致します。
いつも、このコラムで、申し上げていますが、この処の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向を見ますと、良い商品を作って分譲している良心的なディベロッパーと、販売力の強さと数字のみに頼って分譲マンション等を企画し販売していますディベロッパーとの「 2極分化 」がとても進んできております。
販売力の強さと数字のみに頼って販売しているディベロッパーに於いて現在は相当な苦戦を強いられて売れずに在庫になっている住戸がかなり多いのが現状なのです。
その様なディベロッパーは資金の回収がうまく行かずに参っています。早く体質改善をして良い商品企画のマンションを分譲する方向に進んで欲しいと願っております。
更に、不動産業界は益々資本主義の原点である「 弱肉強食 」傾向が顕著になり「 超大手、大手ディベの寡占化 」がどんどん進み、準大手ディベや中堅ディベが超大手ディベロッパーに吸収合併されたりしています。
準大手ディベや中堅ディベが、これらの会社と対峙して勝負するには是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って商品を作る事がとても大切だと思います。
また、その様にしなければ生き残れないでしょう。その様にされていれば顧客は売主の「 こだわり 」や「 誠意 」を敏感に感じとり購入意欲が湧きます。そして入居後もクレームの起きない良い商品を作る事で知名度も上がります。
誠意が感じられ入居後もクレームの起きない良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、その結果で不動産業界や一般社会に於いて良い評判を立てる事が生き残る道です。
その様にされていれば、自ずと会社の信用度が高まり「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )に結びつき「 超大手、大手ディベの寡占化 」に楔( くさび )を打てます。
準大手ディベや中堅ディベも 超大手、大手ディベと対等に勝負できる会社になりえると私は確信しています。
そして、それを永遠に継続し、魅力的なクレームの起きない良い商品作りをされていれば、準大手ディベや中堅ディベは不動産業界だけでなく、一般社会でも会社名や「 ブランド 」名の知名度も上がり販売におおいに寄与致します。
ですので、いままでの私のコラムや今回のコラム70号『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』を参考に「 モノづくり 」を継続する事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる唯一の道だと私は確信しております。
「 継続は力なり 」です。そして「 誠実に勝る近道無し 」なのです。
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第4項目である『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』の内容は分譲マンションの商品企画・基本計画段階で建築物の耐久性の良さの判断基準ですのでとても重要な事なのです。特に今回の内容も売主の評価に多いにつながる事ですのでとても大切な事柄なのです。
手前味噌になりますが、今回も私が今迄約30年以上手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務や工事監理の経験に基づいた大変貴重なお話なのです。
準大手ディベや中堅ディベの方々はこれから進める、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点に於いて是非今回のコラム内容を良く理解して取り入れて下さい。今回のコラム内容は、最近販売されている新規分譲マンションの仕様の中でも購入者( 入居者 )がかなりこだわりを持っている部分です。
そして、これも毎回申し上げていますが、分譲マンションの計画時点で一言申し上げておきます。私が今までの設計業務の経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベや中堅ディベは、『 製販一体 』体制で絶対に行う事です。
分譲戸建や分譲マンション等の商品企画会議では製造部門と販売部門と一体になって戴きたいと思います。その理由は販売部門が顧客の生の声を商品企画会議で発言し製造部門に伝え、その内容が良ければどんどん商品企画や商品内容等に反映できるからなのです。
更に、今回の『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』の具体的な理由が販売部隊の方々も良く理解でき顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
前置きがいつも長くて申し訳ございません。さて、本題である『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』をこれから具体的に御説明致します。
さて、まず「 スラブ 」とは鉄筋コンクリート造の建物の床のコンクリート床板(版)の事です。
分譲マンションを快適に住って頂くには「 スラブ 」の厚さが重要です。この「 スラブ 」の厚さは最低20センチ以上必要なのです。
そして「 スラブ 」の厚さが程度ですと小梁の有無も確認致しましょう。
構造設計者に聞きますとスラブの厚さが20センチでも梁( 大梁や小梁 )で囲まれた梁間面積が30平方メートル以上になると版振動が大きくなり上階の重量衝撃音( ドスン音 )が下階に聞えてくる場合があると危惧しています。
重量衝撃音遮音等級はLHで表示します。上階に住んでいる子供の飛び跳ね音がかすかに聞えるのがLH-50と言われています。
住戸の専有面積が72㎡位でスラブの厚さが20センチですと最低でも小梁が2本ないと重量衝撃音遮音等級はLH-50位にはなりませんので上階住戸の「 ドスン音 」が聞え、クレームの元になります。
よく、小梁が無いと天井が平らになってリフォームし易いから良いと言っていますが、私の独断と偏見になりますが、工事費の削減の為としか思えません。
理由はマンションの住戸の天井には最低でも「 2本のダクト 」が通っています。よほど階高( 各階の高さ )が高く天井裏の隙間の高さが高くないかぎり、この「 2本のダクト 」は梁型の様に囲われて天井より下がって出てきます。
ですのでほとんどの住戸の天井には例え小梁がなくても梁型は発生するので天井は平らにはなりません。
スラブの厚さが例え、23センチでも梁間面積は40平方メートル弱でLH-50を確保するには住戸専有面積70~80㎡でも小梁は最低でも1本必要です。それであれば購入者( 入居者 )は快適に暮らせます。
更に申し上げれば、最近流行りの「 ボイドスラブ 」と言うスラブがあります。通常この「 ボイドスラブ 」は厚さが27センチ~33センチ位です。スラブの中にボイド( 穴 )が空いていて理論上は軽量化して克つ強度を上げ版振動をほとんど起さないと言っている代物です。
世の中、理論上の計算値どおりに行けば誰も苦労は致しません。私も約15年前に構造設計者の勧めである分譲マンションで「 ボイドスラブ 」を採用しました。住戸専有面積が75平方メートル程度でしたので小梁を入れずに設計し、失敗致しました。夜間静かな場所でしたので、上階住戸の重量衝撃音が良く聞えクレームが出ました。
最後になりますが、最近は工事現場の職人不足ですので各階の「 スラブ 」をあらかじめ工場で製作しています「 PC版 」を採用しているケースが多いのです。この「 PC版 」とはプレキャストコンクリート版と言います。
「 PC版 」では、先程申し上げました重量衝撃音遮音等級LH-50を確保するのは難しいですし、耐久性に難が有ると思います。ですので分譲マンション等の床に「 PC版 」を採用するのはお奨めできかねます。
音のクレームは竣工後には対策工事はほとんどできませんので、謝るのみでした。
これら上記の事は設計者として辛酸を経験したからこそ言える話です。
超大手や大手ディベロッパーは一流とは限らないと私は常に言っています。超大手や大手ディベロッパーに於いても私の価値観では一流は数社しか有りません。ほとんどが三流なのです。
一流のディベロッパーは購入者への配慮が行き届いたマンションを供給しています。具体例の一つとして入居後もなる耐久性やクレームの元である遮音性を高めています。
「 スラブ 」の厚さと梁( 小梁 )の有無を見れば一流のディベロッパーか三流のディベロッパーかが簡単に判断されてしまうのです。
『 スラブの厚さは最低20センチ以上必要 』は、これから新規分譲マンションを計画していますディベロッパーの顧客( 入居者 )に対する配慮の判断材料になりますので上記の御説明を肝に銘じて遵守して下さい。
何度も申し上げています様に、不動産の分譲事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客への気遣い及び将来問題が生じないマンションを作り続ける事なのです。
但し、毎回注意していますが、商品内容の質やクレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事もよく肝に銘じて下さい。
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第5項目である『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件 』に関してのお話を致します。
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
以上。