高度成長を30年以上続けてきた中国経済は今、大きな曲がり角に来ている。2桁成長は終わり、2015年は6.9%と25年ぶりの低水準を記録した。今後5年間、中国経済は正念場を迎え、危機発生するかどうかが世界に注目される。
総合的に見れば中国経済の減速が避けられない。まず車と住宅を見よう。裾野が広くほかの分野への波及効果が大きいため、2大エンジンと言われてきた。事実、主要国の中でリーマンショックの影響から最も早く脱却できた中国経済だが、その立役者は正にこの2大分野である。
2009~14年の6年間、新車販売台数は2008年の938万台から14年の2349万台へと1411万台も増えた。年平均伸び率は17.5%にのぼる。住宅を含む不動産投資もこの6年間、年平均20.6%(名目伸び率)と伸び続けてきた。しかし今、新車販売台数は頭打ち状態に近づき、住宅の空室率も高く新規投資が停滞している。2大エンジンに疲労感が漂い、経済成長を牽引するには力不足が明らかだ。一方、車と住宅に代わる新たなエンジンが見つからず、今のスピードを維持することが難しい。
製造業の設備過剰という構造的な問題も表面化している。粗鋼、セメント、平版ガラスなど分野では2~3割が設備過剰となっており、是正するには3~5年がかかる。これは経済成長率を押し下げるマイナス効果となっている。
さらに、中国経済は労働力人口減少という深刻な問題を抱えている。中国では60歳定年という制度があり、一般的には15~59歳を労働力人口としている。この人口は2012年345万人減、13年1773万人減、14年371万人減と3年連続減少している。実際、中国経済成長率も12年より2桁成長から7%台に減速し、労働力人口減少との連動関係が裏付けられる。この傾向は今後も続く見通しである。
中国政府は2014年末より実質的に「1人子政策」を廃止し、出生人口の増加を期待していたが、実際15年の出生人口は前年比32万人減となり、少子化の流れに歯止めがかからなかった。予測によれば、2025年からは総人口も減少に転じ、高成長を支えてきた人口ボーナスは消える。
中国政府は2020年まで国内総生産(GDP)を10年の2倍にする目標を掲げている。それを実現するには向こう5年間年平均成長率を6.5%以上に保つ必要がある。
だが志高くとも道が険しい。中国経済をめぐる国内外環境を見る限り、6.5%以上の成長維持は極めて困難と言わざるを得ない。
2015年中国の1人当たりGDPは7600ドルを超え、この先に「中所得国の罠」が待ち受ける。これまで新興国の成功例は極端に少ない。習近平国家主席も危機感を強め、最近、次のように発言している。
「今後5年間は我が国の発展にとって、各種リスクが絶えず累積し集中的に爆発する時期になる可能性がある。重大なリスクが発生した場合、それを乗り越えなければ、国家安全は重大な脅威に晒され、近代化社会を構築するプロセスも中断せざるを得ない」。「我々はリスク回避を重要に位置付け、平時に有事を念頭に置き、重大リスクを未然に防がなければならない。仮に発生したとしても、それに耐えられ乗り越えなければならない」と。
中国はこの正念場を乗り越えるかが注目される。日本企業もチャイナリスクを念頭に、危機管理を強化しなければならない。