先週、第140回・全国経営者セミナーに、顔を出してきました。
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- 第104回「ジャパネットの経営」(著:髙田旭人)
コロナ禍にありながらも、意欲の高い経営者、リーダーの方たちが集まり、
例年以上にピリっとした空気!
講師関係者席にも、新将命さんや福永雅文さんら大御所が陣取り、
熱心にメモをとられていた姿が印象に残っています。
皆さんの学ぶ姿勢に、ぼく自身、火をつけられた感があり、
今まで以上に充実したセミナーとなりました。
今回、講演を聴いた中で、いい意味で期待を裏切られたのが、
髙田旭人氏。
"ジャパネットたかた"でおなじみの髙田明氏のご子息で、
現在、2代目社長として指揮を執っています。
明氏と違ってテレビで顔を見ることもないので、
正直、全く存在を認識していませんでしたが、
面白かったですね!
ゆるぎなき強い信念と柔軟性、先を見通す目を合わせ持つ、
実に興味深い経営者です。
父であるカリスマ社長が全権を託して退き、
社長に就任して5年。
周囲から不安視する声も聞かれる中、
約35%も売り上げを伸ばして、過去最高売上高を更新!
その躍進理由がよく分かるのが、今回紹介する
『ジャパネットの経営』(著:髙田旭人)
冒頭に経営者としての旭人氏を物語る、一節があります。
「不遜な例えかもしれませんが、父は長嶋茂雄さんのような直感型の天才タイプ。
それに対して自分が目指すべき方向性は野村克也さん、といったところでは
ないかと思っています」
経営者であるだけでなく、トップ営業、会社の象徴として君臨してきた明氏は、
まさに"ミスター巨人軍"の長嶋氏のような存在。
強烈な個性とリーダーシップによって会社を牽引し、成長させてきた手腕は、
誰もが真似できるものではない。
旭人氏も本書の中で、「とても父のようにはなれないと思います」といったことを
たびたび書かれています。
しかし、それは悲観でも、謙遜でもなく、冷静に自分という人間を見つめての言葉。
そして、カリスマではない自分だからこそできる経営、
すなわち、野村克也氏のような"考える経営"というのが
旭人氏の最大の持ち味と言えます。
その手腕の事例が、いくつも具体的に書かれていて、
非常に読み応えがあります。
たとえば、
・父の時代に培った強みをどのように分析し、伸ばしてきたのか?
・社長の強力なリーダーシップに従うのではなく、社員一人ひとりが考えて動き、
成長する組織に変えるには?
・ジャパネットの中核である「見つけて、磨いて、伝える」とは?
などは、特に必見!
さらに、会議改革や「なんでも質問会」、「お菓子会」などの
ユニークな取り組みも、大いに参考になるはず。
個に頼らず、チーム力を高めるマネジメント哲学は、
あらゆる業種に通じるもので、これからの時代にさらに価値を増すもの。
経営者、リーダーはもちろん、
後継者問題が気になる創業者、
そして2代目、3代目の立場の方にも
ぜひ読んでいただきたい一冊です。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『J.C. バッハ:Symphonie concertanti(協奏交響曲集)』(演奏:Budapest Strings)
"楽聖"J.S.バッハという偉大なる父を持ちながら、その影に隠れることなく、
バッハ一族の中でも傑出した才能を見せた、J.C. バッハ。
畑違いではありますが、高田旭人氏に通じるものを感じます。
あのモーツァルトにも影響を与えたといわれるJ.C. バッハの音楽、
合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。