「闇学」入門 (集英社新書)
です。
「闇学」入門 (集英社新書)/amazonへ
今年読んだ本の中で、今のところ、
一番の掘り出し物です。
では、一体どこがどう面白いのか?
何がオススメなのか?
1994年夏、東京のJR高尾駅。
思いがけず終電を逃した著者は
どうするか迷った末、始発が来るまで
近くの高尾山に入ってみることに。
高尾山は、標高599 m。
小学生の遠足を始め、気軽なハイキングコースとして
広く親しまれている山。
一応懐中電灯を持っているから大丈夫だろう、と
気軽に歩を進めたものの、思いのほか暗く怖ろしい。
深い闇がどこまでも果てしなく広がっているように思える。
やがて、目が暗さに慣れ、昼間の森とは別世界の幻想的な
モノトーンの森が目の前に立ち現れた。
なんという興奮!
と同時に、毎晩やってくる闇の世界を無視して
蛍光灯の中に埋もれて生活してきた自分に
強い違和感を覚えた。
オフィスでは一日中電灯がともり、
ブラインドを降ろしたままなら、昼か夜かもわからない。
コンビニ、ファミレスはもちろん、
住宅の多くも昼夜問わず電気をつけている。
昔の夜は激しく暗く、昔の昼は激しく明るかった。
夜明け、日暮れという1日2回のドラマを体験しながら暮らしていた。
しかし、今や昼にめったに強い日射しを浴びることなく、
夜は懐中電灯がないと不安なほど暗い、などということもまずない。
ひどく単調な光環境の中での暮らしは、
知らぬ間に、私たちにとんでもなく強いストレスを
与え続けているのではないか?
…この出来事以来、著者は闇を見直し、研究を進めるとともに
さまざま闇を体験。
その結果、鈍った五感がどんどん蘇り、
体調も気分も爽快に!
また、闇が古来、日本のほとんど全ての文化と密接な関係に
あることにも気づきました。
『古今和歌集』『万葉集』『枕草子』『暗夜行路』…
文学を語る上でも欠かせません。
本書は闇を学ぶ"闇学"であるとともに、日本という国を知る
"日本学"の書といっても過言ではありません。
闇を失うことは日本の文化を失い、日本人の感性を失うことを意味する――。
では、我々は一体どのように闇と付き合い、
向き合っていけばよいのか?
その結果、どんな自分に出会えるのか!?
ビジネスにも日常生活にも優れた示唆を与えるこの一冊
ぜひ読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
オットー・クレンペラー指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団演奏の
マーラー:交響曲第7番「夜の歌」です。
巨匠がつくりあげた夜と闇学との共演を
じっくりお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回!