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経済・株式・資産

第58話 手元キャッシュを最大化する経営(4)

あなたの会社と資産を守る一手

経理の業務をこなしていると身にしみて理解できるが、利益というものは実態とかけ離れたものだ。
 
だから、利益操作なるものができてしまう。例えば赤字に転落しそうな企業が、最後に少し高めの価格で少量の商品を購入したとしよう。最終仕入原価法を採用していれば、同一商品で最後に仕入れた単価x数量で棚卸し金額が決まってくる。
仮にそれを行った会社をA社として、A社の在庫はB商品だけで、在庫が3万個だったとする。通常時はB商品を単価1000円で仕入れるのだが、決算日に1100円で100個仕入れて在庫の最終個数が変わらなかったする。
そうすると不思議なことがおこる。
 
前提:最終在庫個数は3万個で一定
 
通常の仕入れしかしなかった場合:
棚卸し価格 30,000個x単価1000円=30,000,000円
 
決算日に1100円で100個仕入れた場合:
棚卸し価格 30,000個x単価1100円=33,000,000円
 
これはバランスシートだけの問題ではなく、利益(損益)に影響することなのだ。
仮にこのA社の決算がほんの数万円の赤字であれば、いっきにこの仕入れという作業で300万円近くの黒字となってしまう。
 
これとは逆に最終仕入の単価を低くした場合、赤字にすることもできてしまう。
 
「取引相手がいることだからそんなことできないだろう」と言われるかもしれないが、フレキシブルに考えればそれをやる術はいくらでもある。
 
在庫だけでなく、同じことが10万円以上の資産の購入でもいえることになる。
 
例えば研磨機械の精度を向上させるセンサーを税込み16万円で買ったとする。
 
この場合、下記のなかから経理処理を決めることになる。
 
1、資産計上して通常の減価償却をおこなう
 
2、資産計上して一括して3年償却する
 
3、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を利用して、全額損金算入する注1
 
1や2を選択した場合、利益の金額が増加し、3を選択した場合、利益は減らすことができる。ただし全額損金に算入はできても償却資産税の対象にはなってしまう。この場合でも利益を増やしたいのか、それとも減らしたいのかで経営者の選択肢は変わってくる。
 
経営者はこれらのことを知識としてもっていても、その知識をどう使うかで利益やキャッシュ、そして税金がどのように増減するか、自分の会社の場合どうしたらいいのか、しっかりと把握しているはずなのだが当然そんな経営者は数少ない。従業員が増えていくと、経営者が経理入力にたずさわるということもなく、理屈では知っているが、ちゃんと理解していないということになるものなのだ。
 
しかし、その状態でおカネの管理をしていくと、いくら凄腕の税理士に税務をお願いしたところで、やがて税金や資金繰りに悩むこととなってしまう。銀行から借りればいいというものでは根本的な解決にはならない。
財務に対する考え方が社長と同じで、前記の部分をしっかり理解している経理担当がいれば別だが、そんな優秀すぎる経理担当をみつけることはなかなかできない。
 
企業再生の仕事をしていると、事業破たんして無一文になったにもかかわらず、見事に再生できる企業がある。30件破たんの案件にかかわれば、そのうち1社あるかないかなのだが。
 
そういった再生して軌道に乗りつつある企業の場合、私自身がその会社の経理にかかわることになる。多くの場合経理をみることのみならず、経理入力をして、会社内のきまりごとまで決めたりすることになるが、そうやって再生企業とかかわっていくと、どこが弱くて、これからどうしたらいいかがだんだんと見えてくる。
 
再生途中の企業の場合、利益もさることながら、キャッシュをいかに残すかが命題で、それを成し遂げるためには毎月の資金の動きとその経理処理にかかわっていなければならないのだ。当然一般的に知られている節税手法ではカネが残らないので、経理入力をして得られたデータから知恵をしぼってキャッシュを残す努力をすることになる。
 
数年前に倒産し、直接的な金銭的支援もほとんどなしに再生させた企業の経理に今もかかわっているが、この作業はつくづく勉強になると感じている。
 

 
注1:国税庁ホームページ
 
No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

 

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