台湾、及び周辺国にとって大きな意味を持つ
一九四九年を軸にした歴史ノンフィクションの大作。
第二次大戦中、及び直後の動乱の様子が、
その時代を生きた当事者の声で綴られているのが
最大の読みどころです。
これは本当に貴重!
どこの国や人が良い、悪いといった主観で構成されていないため、
1つ1つの声に、じっくり向き合うことができます。
よくぞ、ここまで調べあげた、と
頭が下がる思いです。
著者の執念ともいえる、強い想いに感服します。
台湾、中国、そして日本。
本書を読むことで、
過去ばかりか、現在、未来への流れも見えてきます。
ご紹介したいエピソードも数知れず。
たとえば、本書の320ページにある、
日本兵として戦争に加わった台湾人男性(葵新宗さん)の言葉。
末端の文書係であったにも関わらず、禁固10年の戦犯とされたことに対して…
龍:判決は10年。納得できましたか?
葵:不満でした。もし人道に則って、平和のためにこの罪を判ずるというなら
私も承服しますが、自分が「勝った」からって思うままに判決を下すんですから。
戦敗した側には戦犯がいて、戦勝した側にはいないんでしょうか?
これが私の考えです。私は国連でだって同じことが言えますよ。
また、322ページにて、葵さんと日本軍の馬場中将とのエピソードには、
思わず涙が出ました。
龍:葵さんと同時期にラバウルで服役していた捕虜のなかに、ボルネオの司令官、
馬場正郎中将がいたと聞きましたが?死ぬ前に葵さんに贈り物をしたと?
葵:馬場さんは絞首刑の判決を受けていて、その時期を悟っていたのか、私を呼びました。
「来たまえ、書いたものがあるから君にあげよう」そう言ってこの額をくれました。
この字は馬場さん自身が書かれて、自身で彫られたものです。
「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」 とあります。こう説明してくれました。
「君は若いから、ときに衝動的になることもあるだろう。でも収容所では
なるべく真面目に勉強して、勉強しながら修練するんだ。いいかい。
君はいずれ帰れるから。体に気をつけて。「日々是好日」を心がけるんだ。
腹が立ったときもこの馬場が言った言葉―
「日々是好日」を思い出すんだよ。
龍:自分はもうすぐ処刑されるというのに、そうやって慰めてくれたんですね…。
葵:そうです。馬場さんがそう教えてくれました。
だから私のモットーは「日々是好日」です。毎日がいい日であるように。それだけです。
実際に、手にとって、ぜひ読んでみてください。
歴史考証として価値ある一冊であるのは当然のこと、
先人が生きた道を受け継ぐ、魂の書です。
尚、本書を読む際にオススメの音楽は
ジョン・ボイド指揮、台湾ウィンド・アンサンブルの演奏による
『吹奏楽コレクション ~アルフレッド・リード:アルメニアン・ダンス/バーンスタイン:キャンディード序曲』
です。
ぜひお楽しみください。
では、また次回。