社員の育成は多くの企業経営者にとって、常に普遍かつ重要な経営課題であり、その重要性は改めて取り上げるまでもないことかも知れません。ところが、様々な人事評価制度の運用状況や目標管理制度(MBO)などの実施状況を確認するにつけ、中小企業の現場では、人材育成が計画的に進められているケースがほとんど見あたらないというのが、残念ながら率直な実感です。
人材育成がうまくいかない原因は幾つか挙げられますが、最も根本的な問題は人材育成の重要性が十分に社内で共有されていないということでしょう。社員を育てようという気風が定着しない理由としては、
1) 管理職とはいってもプレイヤーとしての期待が大きく、部下の育成が管理職自身の重要な職務であることが認識されていない。
2) 管理職自身に、上司や諸先輩から育ててもらったという実感がないため、その経験値のバトンを次代へと渡していけない。
3) これまでに中核人材が育たなかった(育てられなかった)こともあり、そもそも後進の育成を任せられる力量を持った人材がいない。
などが指摘されるところです。
部下育成は、一朝一夕には成しえません。「日頃より育成を意識したマネジメントを心がける」「計画性をもって部下指導にあたる」という視点がないと、思い描いたように人を育てることはできないといえましょう。
ところで、中小企業の多くが、採用活動で苦戦しています。高い技術やスキルを保持した有為な人材を確保するのは、今後もますます難しくなってくることでしょう。優秀な人材を獲得するのが難しい状況が続いていますと、採用も仕事力よりは人柄重視にならざるを得ません。「入社した後も他の社員とうまくやっていけそうな、真面目で人柄のいい人を採用し、仕事力の面での不安は入社後のOJTで鍛えていくしかない」というスタンスにならざるを得ません。
このような会社では、入社後の人材育成の成否が企業繁栄のカギとなります。
コロナ禍の終焉がなかなか見通せないなかで、デスクワークを中心に中小企業にも改めてテレワーク推進の機運が高まっています。しかしテレワーク下にある若手社員にすれば、上司や会社が「自分の仕事ぶりをしっかり見守ってくれている」という安心感が得にくい状況にありますし、フォーマルな定例Web会議はあっても、インフォーマルなコミュニケーション(世間話・雑談)が全くなく、会話を通じて笑顔になることも無いままに1日が過ぎてゆく…、そんな状況も増えつつあります。
このような状況が続くと、社員の成長にとってマイナスであるばかりか、生産性向上や人材定着という面でも心配が残ります。
どのような環境下にあっても、人材育成が優先度の高い経営課題であることに変わりありません。それを忘れず、社員間コミュニケーションのあり方にも配慮しながら、計画的に社員の能力開発・育成を図っていただきたいと思います。そして、評価制度も、評価結果を反映する賃金処遇も、それぞれが人材育成を支える者であることを忘れてはなりません。
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