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68軒目 「次の時代の予感を感じる若手料理人の星」

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

ラフィネス
(東京都)
shikumi68_01.jpg
 先日、新時代の若き才能を発掘する、日本最大級の料理コンペティション『RED U-35』が開催され、テレビなどのマスメディアでとりあげられた。
(参考:『RED U-35』ホームページ
 
 そのコンペティションで優勝したのが、本日紹介する『ラフィネス』の杉本敬三さんだ。
 
 10年くらい前に私は、ジュネーブからフランスの中央ジュラ山脈付近にある“きのこの魔術師”として名高いレジス・マルコンシェフのオーベルジュ『オーベルジュ・クロ・デ・シム』という当時二つ星を訪れた。
 そのレストランで知り合ったのが敬三シェフのお兄さんだった。
 帰国して、敬三シェフの出張料理に誘われ、交流を深めた。
 
 5年ほど前、敬三さんがシェフを務めていた『オーベルジュ・シュナンブール』を訪れ、アルザスの有名なドメーヌ『マルセルダイス』を案内していただいた。
 その敬三シェフが日本に戻ってレストランを2012年の春オープンさせていた。
 2012年の夏、お兄さんから連絡があり「食事でも」ということになり、『第三春美鮨』を勉強することになった。魚の〆方や産地の話でたいへんもりあがった。もちろん、話はフランス料理の手法についても及んだ。
 彼は「ドーバーを訪れ、生でドーバーソールを食べたが、ヨード臭かった」「そのドーバーソールも塩をして数日寝かせると、ヨード臭がとれる」「フランスでは塩をして寝かせることをキュイソンといい、キュイは火入れを意味する」など話していたように記憶している。
 最後に「弟はキュイソンにこだわっている」と言った。
 そして、その席で、「弟の敬三がこの近くでレストランを始めたんですよ」という情報を得て、『ラフィネス』に同行した。
 
 アルザスのレストランは老朽化しており、星を目指せるレストランだったので、単価もかなりリーズナブルに提供していて、地域の人に愛されていた。
 そんな印象もあって、あまりにも非日常の雰囲気に驚いた。
 
 初めて彼の店を訪れたのは2012年の秋だった。
 敬三シェフが提供してくれたのは、塩をして一週間くらい熟成をかけたノドグロと聖護院だった。寝かせるときに出たエキスをブイヨンと合わせた一皿のインパクトは忘れられない。
 ただ、彼の店は地階にあるため、某格付け誌ではプロトコルにひっかかるようだ。星はついていない。
 
shikumi68_02.jpg 一年経って、伝統時なテクニックを精巧に駆使し、完璧な一皿を次々と生み出す彼の才能には驚くばかりである。もちろん、私ばかりでなく、彼の評判は多くの人を魅了していた。
 
 しかし、彼には有名な店にいたという肩書がなかった。
 彼が今回の『RED-U35』にエントリーしたのはそのためかもしれない。
 多くの人が重視することは、「マスコミの情報」、「有名シェフであること」、「有名店であること」だ。このタイトルがあるから、アンカリングされ、評価をする。
 したがって、ノンタイトルの料理人にはハンディがある。そして、よっぽどの才能がない限り埋没するリスクに直面する。
 
 しかし、敬三シェフは違っていた。ノンタイトルでありながら、すでに巷ではかなり高い評価になっていたのだから。
 今回の優勝で、タイトル者として、タイトルや既得権を持つ多くの料理人の中に入っても目立つ存在になることは間違いないだろう。
 手間のかかった伝統的なテクニックを軽やかに表現する敬三シェフは、素材に回帰し見た目の斬新さに偏り過ぎたニュークリエーションの流れに一石を投じるかもしれない。
 

ラフィネス
港区新橋4-9-1 新橋プラザビル B1F
電話 03-6721-5484
 
→ホームページ

 

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