「少子・高齢化によってマーケットが縮小している。だから今後、日本の顧客を相手にしていてもしょうがない」と紋切り型に言う人がいる。しかし、人口減少社会の微妙な変化や価値観の揺れをいち早く捉え、それらを商品化すれば、国内にも獲りにいくべき新しいマーケットを発見できると提唱する、「人口変動と成長戦略の第一人者」古田隆彦氏にお話を伺った。
人口減少が進む日本は、どう変化しているのでしょうか?
たとえば、子供は減っている、と誰もが言っていますが、私は増えていると思っています。
子供の定義は0歳から14歳までですが、そう決めたのは1960 年、64年前です。当時、高等学校に行くのは、1クラス50人のほぼ半分。大学に行くのは4人か5人ぐらい。そういう時代です。
ですから、15歳で生産人口となり、もう子供ではない、というのはそれなりに合理的でしたが、今はどうでしょう。
高校進学率は98%で、大学・専門学校進学率は7割超です。そういう時代に、15歳を働いている大人と同様に扱うのは無理があります。
20歳で年金を払えというのも実態に合っていません。それどころか、大学を卒業して24、5歳になっても両親にパラサイトする青年が多い時代です。
よって、自活ということを基準に考えれば 、24 歳までを子供と考えるのが妥当です。
ただ、一度に変えるのは無理ですから、これから30年かけて3年に1歳ずつ「子供」の年齢を上げていくと、3年ごとに子供の数は右肩上がりで上昇していきます。
さらに質の面では、子供はもっと増えています。30歳を過ぎても、少年的世界にどっぷり漬かっている人が意外に多いようで、40歳の男性ですら、通勤電車で携帯ゲームに夢中になり、自室に帰ればアニメやゲームに熱中しています。
女性層もまた、キャラクター商品を手放しませんし、少女コミックの衣装を真似た「ネオ・ロリータ」ファッションを継続させています。
そういう意味では、子供の上限がグーンと上がっているのですから、「子供が減っているから、おもちゃ産業はだめだ」ではなく、「おもちゃの対象が40代まで広がった!」と考える会社が伸びていきます。
ご存知のように、おもちゃ産業は現在、再編成期です。業績が下がっていく会社がある一方で、絶好調で伸びている会社もあります。
社長の発想が違うだけで、会社の業績は変わってくる時代なのです。
老人が増えている、というのも実は間違いです。子供と同じように、1960 年代の定義によれば、65歳以上の方々を高齢者といいます。
その数は確かに増えていますが、平均寿命が70歳前後だった60年代に比べて、現在は平均寿命が1.3から1.4倍くらい伸びています。
平均寿命が上がった分だけ知力・体力がありますから、最期の5年間だけ高齢者として国家が面倒を見るようにして、それまでは健康で働けるように頑張ってもらう。
そうすると、高齢者の定義を65歳から75歳に上げてもいいわけです。
これも一度に上げるのは大変ですから、3年に1歳ずつ上げていくと、高齢者の数は右肩下がりになり、老人は減っていきます。扶養する層が増え、扶養される層が減っていくので、年金問題はアッという間に解決です。
ここで大事なことは、平均寿命の上昇により、従来の「幼年0~6歳」「少年7~14歳」「青年15~29歳」「中年30~64歳」「老年65歳以上」という区分は、もはや通用しない、ということです。
平均寿命が1.3から1.4倍に延びた以上、年齢区分も上方にシフトさせて、0~9歳を「幼年」、10~24歳を「少年」、25~44歳を「青年」、45~74歳を「中年」、75歳以上を「老年」とするのが適切です。
奇異に感じられるかもしれませんが、世の中を素直に見渡せば、この区分はすでに通用しています。ある調査では、新成人となる若者に尋ねると、その約7割が「自分は大人ではない」と答えていますし、80歳の人が、エベレストに登ったり、国政選挙に出たりしています。
このように、現実はすでに新しい区分へ近づいていますから、旧来の年齢区分と新しい現実とのズレは、ズレた部分にフィットする製品やサービスの需要の源泉になります。