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第17講 正確な事実の聞き取りに失敗しないために~その4~

クレーム対応 実践マニュアル

【4】「アクティブリスニング」で聴けば、「正確」な「すべて」が聴き取れる


私がクレーム対応担当者として最も成功率を一挙に高めることができたのは、
『アクティブリスニング』という誰もがもっている心理を知ってからです。

『アクティブリスニング』は日本語では『積極的傾聴』と呼ばれています。心理学者のカールロジャースが唱えたものです。
概要としては、『相手の口から出た言葉だけを聞くのではなく、相手の心に寄り添って聴き取りましょう。
そうすれば相手の本心は手にとるように見えてくる』というものです。

クレーム対応に置き換えて考えると、

『相手の口から出た言葉だけをすべてだと思っては、その後の判断を誤ります。
もっと、相手の本心を吐き出させ、その本心に対しての対応策を講じなければ
一向に相手の納得は得られない』

ということになるのではないでしょうか。


この考え方を知ってからは、お申し出者の言い分のすべてがすべてではないのではないかと思いながら、
お申し出を聞くようにしています。まだ、言いそびれていることがあるのではないか、
言い忘れていることがあるのではないか、また、無意識のうちに隠していることがあるのではないかと。

また、お申し出内容がすべて事実に対して正確であるとは限らないという思いでも聞き耳を立てるようにしています。
話しの中に1箇所や2箇所、自分が不利にならないための虚言や、誇張や、詭弁が含まれているのでないかと
思いながら会話を進めるようにしています。

それは、お申し出者の言い分を鵜呑みにしたらこちらが不利になる可能性が高くなるから、
お申し出者に有利な立場を軽々しく与えてしまうからということではありません。
相手に不平不満を持っている人の抗議には、よほど論理的に話せる訓練を受けている人以外は、
心理的に平常心でない分、本音や真実を素直に吐き出すことができないと心理学的に言われているからです。


私たち対応担当者は、誤りのない『事実』と本音が語る『事情』をふまえて、対応策を練るわけですから、
お申し出者から差し出される『事実』に錯覚が混じっていて、『事情』が詭弁であっては、もてるスキルを
駆使して捻出した対応策も的を射たものではなかったという徒労の結果を招くのです。

今から思えば、私自身もそんな徒労を重ねた時期もありましたが、近頃では、
ほとんど一発で的を射、納得していただける対応策を提案できるようになりました。


それでは、
どのようしてお申し出者から『正確な事実』と『本音の事情』を差し出していただくかというと、
それは『お申し出者にたくさん話をしていただく』に尽きるのです。
たくさん話せば、不正確な事実は『正確な事実』とつじつまが合わなくなってきますし、
いろんな不満をたくさん口走る中にも、『本音の事情』だけは、何度も何度も繰り返されるものなのです。

お申し出者にたくさん話をする時間を与えると、それはそれなりに要望が多くなるのではないかと、
時間が果てしなく長くなるのではないかと、さまざまな危惧が生まれますが、なんと言っても『正確な事実』と『本音の事情』が
理解できない限りは、納得していただける結末は決して迎えられないことを再認識しましょう。


                                       中村友妃子          


【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)

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