【5】「怒り」は、心の悲鳴。
お困りごとの解消に協力することで“怒り”は鎮まる
お申し出者の怒りに満ちた恫喝や、ヒステリックな声は、問題がなんであれ原因がどこであれ、
対応担当者としてはただひたすらに恐怖感を感じるものです。
けれどある時、こんなお話を聞きました。
「『怒り』というものは二次感情です。一次感情が発生しない限り『怒り』は発生しないのです。」
「『怒り』だけを鎮めることはできません。『怒り』を発生させた一次感情を鎮めない限りは『怒り』は鎮まらないのです。
逆に言うと、そもそもの一次感情が鎮まれば『怒り』は自然に鎮まるものなのです。」
ポロリと目からうろこが落ちる感じでした。
『怒り』だけを鎮めようとしてもダメなんだ。
それまでの長年、不毛の悩みに惑わされていたことを知りました。
それでは、「怒り」を発生させる一次感情とはどんな感情か。
悲しい・淋しい・悔しい・恥ずかしい・切ない・格好が悪い・痛い・怖い・不安・心配などの
重苦しい感情たちが、「怒り」のアクセルを踏んでいるようです。
これらの形容詞をこうして並べてみると、「怒り」の根拠は、へこんでいるということにしか
過ぎないと思えませんか?私にはそう思えたのです。
それからは、怒声を浴びながら、(正直、まだまだ平常心でその怒声を聞けるとは言えませんが、)
“なににへこんでるのかなあ~。なにがあってんやろう。なんかできることがないかなあ。あったらいいのになあ”
という気持ちで話を聞くように心がけています。
そうすると、少しづつではありますが怒声の恐怖感もやわらいできます。
ただ、対応担当者としては今、直面している「怒り」を発生させている
一次感情はどの感情であるのかを見出す力と作業が必要です。
1)製品に対する不満の事実とお申し出者の事情から、
2)発生したお困りごとを見出し、
3)そのお困りごとを感情に置き換えたならどの一次感情が等しいのかを判断し、
4)その一次感情を解消するには、どのようなことをして差し上げたらいいのかを見いだし、
5)お申し出者に「~をさせていただこうと思うのですが」と提案する
という手順の遂行が、「怒り」を鎮め、自動的に納得を得る結末を迎えるという幸運を招くのです。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)