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愛読者通信

「『会社の存亡をかけるような大決断をしないで済ませる』 本来、これが一番良い経営だ」
佐藤 肇氏 (スター精密 会長)

「愛読者通信」著者インタビュー

 2021年7月に出版した『経営の決断101項』が好評で、多くの経営者に読まれています。そこで著者の佐藤 肇氏に、とくに3年先までの《正しい景況の読み方》と、盤石な経営基盤をつくる《決断の急所》を伺います。

佐藤 肇(さとう はじめ)氏
スター精密[東証プライム]代表取締役会長
実父・誠一氏が裸一貫で創業したスター精密に入社。父から受け継いだ経営ノウハウを、佐藤式先読み経営としてさらに進化させ実践。その結果、「海外売上比率8割超」「高収益・自己資本率7割」の超優良企業へと育て上げる。 2017年3月より代表取締役会長。   
著書に『佐藤肇 経営の決断101項』『社長が絶対に守るべき経営の定石50』『先読み経営』『社員の給料は上げるが総人件費は増やさない経営』『社長としての人件費計画の立て方』(共に日本経営合理化協会刊)


 

Q:直近の経営環境を、どのように捉えて経営していくべきでしょうか?

 いま、コロナ・ショックが業績に大きく影響している会社、影響が少ない会社と様々でしょうが、コロナは簡単に終息しない、少なくとも3年先までは「withコロナ」を前提に、経済が正常回復しないと捉えた方がよいでしょう(2021年10月インタビュー)。
 私はコロナの専門家ではないので、この予測が当たっているかどうかは分かりません。しかし、自社が身を置く業界やマクロ経済が最悪になっても何とかなる見通しを立てておけば、それより悪くならないかぎり、後は上振れするだけ利益が増します。
 だから、実際に厳しくならなければ「その分は儲けもの」という気持ちで経営をやることが大事です。
 最悪の見通しを想定することは非常に嫌なことですが、さほど影響はないだろうと楽観視して何も手を打たないと、想定以上に悪い結果になったときに会社を危機にさらすことになります。
 とくに、現在のような不確実性の時代は最も厳しい計画を作成して、日頃から緊急時の対応を考えておく必要があります。
 状況が変わってから準備を始めたのでは遅い。計画は外れるからこそ意味があると捉え、常に準備をしておくことです。
 そもそも、社長業は「決断業だ」とよく言われるが、それは違います。
 会社の存亡をかけるような大決断をしないで済ませる。本来、これが一番良い経営です。
 私が大学を卒業し、父・誠一の創業したスター精密に入社してから、およそ半世紀。入社時は売上25億円ほどの典型的な中小企業だったわが社が、ここまで成長発展してこられたのは、経営の根本にこの考え方があるからです。 
 大方の危機や逆境は、環境の変化に常に目をくばっていれば、相当事前に察知できます。もちろん、正確に先を見通すことは難しいが、それでも自分なりに仮説を立て、最悪の事態になっても何とかなるよう優先的に策を講じていれば、直前になって場当たり的な大決断をしなくて済むものです。
 厳しい言い方になりますが、もし、事あるごとに決断をしているようなら、それは社長の怠慢にほかならない。社長であるならば、予測でよいから危機を網羅して、窮地に立たないよう備える。それが、私のやってきた「経営の決断」です。

 

Q:現在のような、いわば有事のときに経営者が念頭に置くべきことを教えてください。

 ひと言で言えば、「キャッシュ・イズ・キング(現金は王様)」です。
 つまり、売上至上主義から頭を切り替えて、「いかに会社におカネを残すか」「いかにキャッシュを最大化させるか」を主眼に置くことです。
 売上利益と実際のキャッシュは別物。売上を増やせばおカネも増えると思っているならば、それは大きな間違いで、売上を増やそうとすると、会社のおカネは減っていきます。
 なぜなら、在庫が増え、売掛債権が増え、設備が増え、ヒトが増え、借金が増え、支払い金利が増え、その分のカネが減るからです。
 もちろん、売上拡大も必要です。売上を減らし続けたら、会社は存続できません。しかし、売れないときにムリに売ると、それは会社を救うどころか、経営危機を招く悪手になるということをご理解いただきたいのです。
 考えてみてください。市況が悪化しているにも関わらず「とにかく売上を確保してこい」と、現場に無理を強いたら、追い詰められた営業員は、客先に出向いてこう言います。
 「2割引きにするので買ってください」、「本当なら90日手形ですが、180日手形で結構です」。決算月なら、「売上がたったら、来月すぐに返品してくれて結構ですから」…。
 売上は増えるでしょうが、肝心の利益は削られ、キャッシュフローは悪化する。こんなことをしていたら、会社は黒字倒産します。

 

Q:会社におカネを残すために、打つべき手を3つ教えてください。

 1つめは、必要運転資金を小さくすることです。そのために、在庫や売掛債権を減らし、カネ回りをよくしましょう。
 キャッシュを在庫や売掛債権として寝かせたまま、日々の資金繰りに借金して、その金利支払いでキャッシュを減らすようでは、ザルで水をすくっているのと同じです。
 打つべき手の2つめは、「捨てる経営」をやることです。
 経営には、「攻める経営」と「守る経営」と「捨てる経営」の3つがあり、将来性のある商品はどんどん攻める。ほどほどの商品は守る。しかし、斜陽化する事業・商品は、たとえ売上が大きくても、早めに捨て去らねばなりません。
 たとえば、わが社はかつてフィンランドのノキアという世界的メーカーに携帯電話の音声部品を納めていて、2009年の取引額は123億円でした。
 しかし、スマートフォンの登場によって、なんと一年で取引額が76億円に減ったのです。
 「3年続けて赤字の事業からは撤退」と決めていますが、このときは赤字1年目で撤退を決断し、4年かけて在庫も売り切って、2014年に完全撤退を果たしました。
 「攻める経営」や「守る経営」は社員に任せてもよいが、「捨てる経営」はトップにしかできないことです。
 そして、捨てる決断が遅くなればなるほど、時間的にも資金的にも余裕がなくなって、経営をむずかしいものにしてしまう。
 だから、「捨てる経営」は早く決断して、取り組まなければなりません。
 同時に、「10年先、何で儲けるか」を常に考え、足元の業績が良いときも悪いときも、将来への「先行投資」を続けなければならない。これが、大事な布石の3つめです。
 携帯電話の音声部品から速やかに撤退できたのも、捨てた事業の利益を賄える新事業を数年前から着々と育てていたからです。
 新規事業が収益の柱に育った時点で、撤退部門の人員を振り分けたので、事業撤退にともなうリストラもやりません。
 斜陽事業は早めに見切りをつけ、同時に、種まきし続けて新しい収益の柱を育てる。この繰り返しでしか、わが社の高収益体質は築けません。

 

Q:変化のスピードが早く、景況不透明な時代に、社長が「正しい決断」をするコツをご教示ください。

「正しい決断をしなければ」と思いつめないことです。
 決断が正しいかどうかは、その時点では誰にも分かりません。だから、自分なりに決断し、実行してみて、間違ったとわかったらすぐに「ごめん、俺が間違った」と部下に謝って、軌道修正すればよいのです。
 一番ダメなのは決断しないこと。
大事なことは「正しい決断」ではなく、「正しい結果」です。良い成果を出すためには、決断と実行を高速で繰り返すしかありません。
 とはいえ、経営の現場では、右に行くべきか左に行くべきか、決断を迫られることが毎日のようにあります。即断できずに迷うこともある。
 私も同じです。トップの孤独やプレッシャーをはねのけながら、親父がつくった会社を少しでも良くしたいという想いで、必死で決断して前進してきました。
 『経営の決断101項』は、そんな重責を担う経営者にとっての転ばぬ先の杖になればという想いで書き上げました。
 本書は、「経営の決断」というタイトルから想像されるような、のるかそるかの決断の数々をご披露するものとは違います。
 むしろ、綱渡りのような経営をしないために、どう先を読み、会社の方向を定め、計画し、全社一丸で乗り切るか。あるいは、間違えたとき、いかに上手に軌道修正を図るか…。
 幾度の難局を切りぬけ、会社を絶対につぶさないために私が大事にしてきた原理原則や経営指標などを101項に厳選し、決断の急所として解説しました。
 本書が皆さんの経営に、少しでもお役に立てば嬉しい限りです。

 

(聞き手:丹野悦子)

「愛読者通信」(2021年10月発行)

 

【講師セミナーのお知らせ】

2023年度 第65期 佐藤塾 長期経営計画作成合宿
佐藤 肇(スター精密 代表取締役会長)

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【3泊4日 完全合宿】
2023年 4月30日(火)~5月3日(水)
合宿初日 10:45開始 合宿最終日 13:20終了
(会場:ホテルグランヒルズ静岡)

▼詳しくは日本経営合理化協会サイトをご覧くださいませ
https://www.jmca.jp/semi/S231304

 

【経営合理化協会・関連YouTube動画】
【キャッシュ重視の経営】 
スター精密会長 佐藤肇氏
我社を好不況に左右されないお金持ちの会社にするにはどうすればよいか。

 

 

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