~病院のモットーが「親切な対応」なので、どのクライアントにも同じように丁寧で親身な対応をしていると、クライアントによってはどんどんと質問が多くなり、そのクライアントにかかる診察時間も来院の度に長くなってしまいました。そのクライアントだけに質問時間を長く割くわけにいかず、「今日はここまでにしましょうね」と言って話を区切るようにしていたら、最近先生が冷たくなった気がすると受付でクレームを言っているようです。その話しをその先生に受付が伝えると、その先生も気分を害してしまったようです。今後どのように対応していけば良いでしょうか?~
(※出典:インターズー刊 Q&A解説「絆」が求められる時代の動物病院マネジメント)
≪対応のアドバイス≫
(1)あなたの病院のモットーの「親切な対応」って具体的になんですか?どのクライアントにも同じように丁寧に親身な対応をすることですか?丁寧に親身な対応ってなんですか?語彙の美しさにあなたの病院が軽率に酔っていませんか?モットーをもっと、具体的にするべきです。このままだったら、「あんたの病院は、飼い主と動物のためならどんな犠牲もいとわない病院なんでしょ!」と言われても言い訳ができなくなります。
(2)なぜ、そのクライアントには時間を長く割くわけにいかないのでしょう?クライアントそれぞれに、思いや考えがありその重さも違います。思いが軽い人は、短い時間で、思いが重い人には長い時間で、これが平等な対応です。平等な対応を勘違いしていませんか?思いが軽い人も、思いが重い人も同じ対応をすることは、平等ではありません。むしろ、病院のような複雑な思いや、複雑な症状に対処する業界にとって、このよう一元的な対応は不親切な対応と揶揄されても仕方がないでしょう。平等な対応とは相手の状況によってマッチした対応をすることです。
(3)でも飼い主さんの思いを飼い主さん任せで聞き続けるには、いろんな問題が出てくるので病院としては困ることになります。だから、今回のクライアントとの関わりのように、途中で時間を遮ることになったのです。そうなると「親切な対応」のスローガンは、正しいとは言えなくなります。
ここで、気づいてほしいことは、できもしないことをできるように言わないことです。結果、クライアントにウソを伝えていることになります。できることだけを具体的に伝えるようにしてください。
(4)クライアントは、待って待って待ち続けてやっと、対面できる医師に、たっくさん聞いてほしいことがあります。その気持ちにどこまで対処するのかは、クライアントの満足度と病院の利益確保の2つが満たされるポイントを見つけて、病院が決めることです。
(5)たとえ、そんな条件の中、決めたことが「冷たい対応」だと1%の人に言われてもビビらないことです。なぜなら、その決め事がクライアント全体を見れば最適であり、利益確保にも大切な対応分岐点であることは、病院が決めたことですから。決めたことを一定期間は貫くべきです。
(6)今回の事例も、1名のクライアントのお声が物議を醸しだしているようですが、それはこのクライアントの理不尽に長い時間のせいでもなく、そのときの医師のせいでもありません。病院のモットーの軽率さのせいです。
(7)今回のような事例の具体的な対応策は、聞き続けるか、遮るかはその場次第ということです。その結果、冷たくされたといわれたら、「言わせておくしかない」とするか、「申し訳なかった」とするかは、その状況しだいです。
動物病院は、クライアントの心の重さを軽くしてさしあげるのもやらなければならない仕事です。それは治療することだけではありません。。
※用いた事例は、実際事例ではなく、よくある事例を基本にして、講師が、独自に作成した事例であることを
ご了承ください。