ある食品メーカーの社長には、いつも頭を悩ませていることがあります。
……私の会社は、営業が値引き攻勢を受けて苦しんでいるのに、
製造は厳しさを感じてくれない。
むしろ、"値引きを食い止めるのが営業の仕事でしょ"と思っている。
どうすれば、製造に厳しさを分かってもらえるだろうか……
こうした悩みを持っている社長はたくさんおられるのではないでしょうか。
通常のメーカーの場合、営業が売上目標を持ち、目標達成に向けて奔走しています。
一方製造は、コストをしっかり見て、それを削減するように指示されています。
①の図をご覧ください。現在100の売上で経費が50、利益を50上げている会社があるとします。
ここで、売上が90に下がった場合、経費を下げなければ利益は40になってしまいます。
直接お客様と接している営業は、市場の厳しさに直面します。
しかし、製造部門には、売上というものがないので、市場の痛みを直接感じることはありません。
そのため、営業は値下げ要求が厳しいので、製造に「何とかしろ」と要求しますが、
製造は「そんなこと言われても売上がないので、厳しさがわかりません」と他人事になってしまうのです。
このような、ちぐはぐな事態になってしまうのも無理はありません。
ところが、②の図では、製造がお客様に対する売値で売上を上げて、
その10%の口銭(コミッション)を営業へ支払うしくみをとっています。
営業は、その口銭を自部門の売上とします。
そうすることによって、製造にも営業にも売上が計上されるのです。
値下げによって、売上が90になりますと、製造の売上が90に下がり、
同時に営業の売上も10から9(90×10%)に下がります。
このようなしくみにすると両部門が同時に市場の厳しさを感じることができるのです。
そして、自部門の利益を出すために、製造も営業も経費削減へと動いていくことになります。
②の図の場合でも、製造が9、営業が1だけ経費を減らせば、売上が90に減っても、利益が下がらず、
現状のままに保つことができます。まさしくこれが実学なのです。
全社員が同じベクトルを持たなければ、厳しい局面を乗り切ることはできません。
売上という共通の目標があれば、全社員が「売上最大、経費最小」を目指すようになるのです。
上から「売上が下がったので、営業も製造も、経費を下げろ!」と言わなくても、
両部門が市場の動向に敏感になり、
製造も今後の売上につながる受注の情報を積極的に聞き出すようになるのです。
さらに、製造は自部門の売上を上げるために、営業に同行して、直接お客様にアプローチすることもあります。
このように、各部門のメンバーが、自部門の利益を上げるため、走り出していくようになるのです。
①と②の図表を比べてもらい「実学というのは本当に面白いなあ!」と感じていただければ、
すぐに、経営システムを見直していただきたいと思います。