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第52回 『日本語を作った男 上田万年とその時代』 (著:山口謠司)

眼と耳で楽しむ読書術

経営者やリーダーたちの愛読書といえば、
確実に3本の指に入ってくるのが「歴史」に関する本です。
 
世界史ならば、古代ローマ、三国志を始めとする中国、
それとナポレオン戦争あたりが定番。
 
日本史では、特に信長、秀吉、幕末維新にまつわるものの
人気が高いですよね。
 
歴史を知ることは、すなわち、人間を知ること。
 
歴史に学ぶ者の強みは、果てしなく大きいと言えます。
 
世界は今、大きな転換の時期にあり、
歴史理解を深めることが、一層重要になってくるでしょう。
 
そこでオススメしたいのが、今回紹介する
 
『日本語を作った男 上田万年とその時代』(著:山口謠司)

tu52-1.jpg
 
です。
 
本書を一言で語るのに、ふさわしい言葉が
本の帯に書いてあります。
 
それは、
 
「もうひとつの明治維新史」
 
というもの。
 
これは、嵐山光三郎さんからのコメントですが、
まさにそのとおり!
 
日本の新時代をつくったのは、
西郷隆盛や高杉晋作、坂本龍馬ら熱き武人だけではありません。
 
彼らのように英雄として語られることは皆無に等しい
“言葉で国をつくった人たち”がいたのです。
 
今、我々が当然のように使っている日本語は、
明治維新を迎え「江戸」が「東京」となった後にも、
まだ存在していませんでした。
 
それどころか、わずか100年前においてすらも、
まだ標準日本語がなく、全国共通で通じる言葉がなかったのです。
 
標準日本語をつくることこそが、国をつくること!
 
そう信じて熱き情熱を燃やし、幾多の苦難を乗り越えて
標準日本語成立の立役者となったのが、
本書の主たる上田万年という人物です。
 
今、我々が話している日本語は、いかにして作られたのか?
 
いわゆる言文一致運動の舞台裏が上田の人生とともに、たっぷり書かれていますが、
これが実に面白い!
 
新たな日本語をつくろうとする人たちと、それを潰そうとする人たち。
 
それどころか、いっそのこと公用語を英語にしたらどうか、
という議論も交わされていたとか。
 
もしも、どこかで流れが変わっていたなら、
日本語が消滅していたり、まるで違うものになっていた可能性もあったとは…。
 
今、当然のように使っている日本語は、
決して当たり前のものなどではない。
 
どれだけの時間と人の手によって誕生したのか。
 
正直、上田万年という人のことを
ほとんど知りませんでしたので、
驚くことばかりでした。
 
そして、もう一人の主役、夏目漱石についても。
 
新しい日本語で書かれた衝撃の小説『吾輩は猫である』の背後には
上田の存在があったとは…。
 
上田の日本語があったからこそ、漱石の日本語があった。
 
漱石作品をより楽しむためにも
本書を読んでおくべきですね。
 
日本の近現代を知る上で
大きな助けとなり、楽しみとなる一冊です。
 
少々分厚い本ですが、読み出したら止められず
一気に読んでしまいますよ、きっと。
 
日本語誕生をめぐる、想像を絶するような熱きロマンの物語。
 
歴史好きな人にはもちろん、
日本への理解を深め、人生をより豊かにするためにも
ぜひおすすめいたします!
 
 
尚、本書を読むときに、おすすめの音楽は
 
『ブラームス:間奏曲集』(演奏:グレン・グールド)

tu52-2.jpg
 
です。
 
ブラームス:間奏曲集/amazonへ

伝説のピアニスト、グレン・グールドは
夏目漱石の『草枕』を愛読していた、と言われています。
 
これも新たな日本語の誕生によって、つながった出来事かもしれませんね。
 
背景の歴史も感じながら、ぜひご一緒にどうぞ。
 
では、また次回。
 
 

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