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経済・株式・資産

第25回 今後ますます重要になる、自らの強みの再考で収益性を高めるという考え方「ロックフィールド」

深読み企業分析

このところロック・フィールドの業績が好調である。2015年4月期は0.2%減収ながら、20.4%営業増益と大幅な増益を達成した。売上高が減少しているのは、無理な出店をしないこと、人手不足に対応して店舗の統廃合を行ったことなどにより、店舗数が減少しているためである。
 
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惣菜というビジネスは安定的に高い収益を上げることが難しいビジネスである。今や食品売り場のあらゆるシチュエーションで惣菜を見かけるが、それでも惣菜そのもので高収益を上げている企業は皆無と言っていい。
 
その中にあって同社は、ブランド化という手法によって、惣菜で成功したトップ企業の1社であるが、それでも現時点の営業利益率は4%に過ぎないわけであり、いかにこのビジネスが難しいものであるかがわかろう。ただし、同社においてはこれまでの試行錯誤の中からある程度の絞り込みの方向は見えてきたことから、今後は収益面の向上も見込まれるところである。
 
同社はもともと高級デリカテッセンの店からスタートしている。その後サラダ市場の提案が市場に受け入れられて、サラダ市場のパイオニアとなり、現在の名声を獲得した。さらには、かつて庶民の惣菜の代表でもあったコロッケを百貨店で販売し、神戸コロッケとして定着させたことも同社のブランド価値の向上に一役買った。
 
その後、百貨店市場におけるこうした突出した成功に意を強くし、当時産業として花開きつつあった惣菜市場において、路面惣菜店「地球・健康・家族」、オフィスミール「サラダバッグ」などを次々と展開した。ちょうどその頃はITバブルのころであり、メインビジネスが活況であったため、それらの新規事業はそれほど大きな負担感がなかったが、ITバブルの崩壊と共に会社のお荷物事業となってしまった。
 
バブルの崩壊を経験し、改め高級総菜こそ同社の進む道として定め、百貨店に次ぐ販路として、新たな商業地として台頭してきた駅ビルに狙いを定め、成功を収めている。また、サラダの新ジャンルとしての和サラダの提案など、新たな市場の開拓も着々と進めてきた。とは言うものの、惣菜市場ではコンスタントな成長と収益性の高さをこれまでは実現できていなかったのである。
 
そして、改めて今、自社の付加価値を見つめ直し、自社の強みを見つめ直し、自社の顧客を見つめ直した結果がこのところの好調に表れているように思われる。今回の収益回復過程と過去の成長局面との違いは、目立った新製品や新たな出店ロケーションがないことである。むしろ、目の前の顧客に対して、製品説明をするなどの丁寧な接客や季節やシーンに当てはまるような買い合わせ商品の提案などが功を奏しているようである。
 
有賀の眼
 
同社の歴史を見てくると、固定観念にはこだわらず、あらゆる可能性にチャレンジするというプラス面と、それゆえにコントロールが利かなくなり、全体としての収益性が安定的に高まらないというマイナス面が混在しているように思える。
 
もちろん、変わり行く世の中のトレンドに新たな創出アイディアを提案する必要性が薄れているわけではない。しかし、ある程度のブランド力を構築し、小さくない規模の売上達成がある場合、自らのビジネスを深め、自らの価値の本質を見出すことで、得意・不得意を見極めることも必要ということではないだろうか。
 
これから先の日本では、人手不足が恒常的な問題となる。その中では、売上規模より、個々のビジネスの付加価値をいかに高めるかが、これまで以上に重要なテーマになると考えられるからである。

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