デフレ払拭のための日米の金融緩和政策、ギリシャやアイルランドに代表されるユーロ諸国の信用不安など、金融市場の不安定化要因は拡大の一途です。一方、中国・インドなどの新興国経済が好調なので、原油や鉄鉱石等の鉱物資源や食料・水産資源に至るまで、資源価格が高騰しています。
特に金は、工業需要や宝飾需要のほか、新興国の外貨準備多角化、投機資金の流入などを背景に、国際価格では史上最高値を更新しています。金の国際価格は、1980年に当時のソ連がアフガンに軍事侵攻して国際緊張が高まり$875/1単位(※)に高騰した後、99年には$252に低迷していました。それがいまや$1,400に迫っています。
金は、有史以来の採掘量が約16万トンに対して埋蔵量は約7万トンに過ぎず、現在の年間産出量で29年後に底を尽きると予想されます。実需に加えて世界景気の不確実性や政府債務問題、年金基金など機関投資家の運用資金流入、ETF(上場投資信託)を通じた投資家層の拡大を理由に、長期的な金価格は底堅いと考えられます。しかし、短期的には景気回復に伴う金利上昇が起きれば、金に逃避していた資金は株式など他の資産に向かい、金価格も調整は免れません。
したがって、金投資を検討される場合には、分散投資の視点から時間をかけて少額ずつ買い増し、総額も運用資金全体の5~10%程度に留めることが一つの目安です。個人が出来る現物の金投資には、1、100万円単位なら金地金、2、10万円単位なら金貨、3、毎月3千円からの純金積立などがあります。黄金の輝きに目が眩まないように、じっくり冷静に長期のスタンスで資産形成に取組むことが肝心です。
以上
※金の国際価格の取引単位は、1トロイオンス(約31.1グラム)です。国内価格は、国際価格を1グラム当りの円建てに換算するので、為替の影響を受けます。