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社長業

第28回 時には「過去」と「未来」を切り離して考える

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2021年7月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

 「前後裁断」という言葉がある。「過去のことも、これから先のことも一旦頭の中から切り離して今この瞬間に全力を尽くすことだけ考える」ということだ。
 時間というのは本来連続性がある。過去があるから今があり、今があるから未来がある。なので、「それは過去の事」「今はその時代とは違う」などと言葉で切って捨てる言い方はあまり好きではない。極力使わないようにしている。

 しかし、実際に会社経営をしていると、前後裁断しなければならない状況が多々ある。この不透明なコロナ禍もそうだ。

 先日、上信越にいる親しい社長と久しぶりに会った。仲間内での食事の場で欠員が出たので、電話をして近況報告がてらに急遽来てもらった。皆を驚かせようと誰が来るかは伝えていなく、突然の再会に大そう驚き喜んだ。社長は、最近地元の鰻養殖業の会社をM&Aをしたのでその話を詳しく聞いた。本来、鰻は水温が暖かいところで育つので、上信越には向いていない。かつては、屋根瓦で有名だったそのエリアは、瓦を焼く熱を何かに利用しようということで鰻の養殖が始まったという。

 今では瓦の生産は少なくなり、冬になれば鰻のためにヒーターで水温を上げなければならなくなった。コストが合わない上に、生き物なので管理も大変だ。出荷出来るまで育てるのに時間もかかる。そこで、社長はその会社を引き受けることになった。養殖業という全く畑違いの事業であったが、数か月ぶりに会う彼は鰻のことについて熱く語った。新しい水質管理のやり方、空気や餌の新しいやり方、新しい売り方、全て自分で考えたと言う。その話しぶりにはそこにいた全員が目を丸くした。

 そんな仲間たちを見ては、「止まっていると、ウチみたいな会社はコロナで大変だから」と、社長は白い歯を見せながら言った。無門塾を卒業以来、会社を多角化してきた。コロナの影響で撤退した事業もあったが、多角化をしてきたおかげで助かった。

 人の価値観は変わっていく。
 過去に当たり前だったことが、今当たり前ではなくなっている。今当たり前のことが、未来において当たり前とは限らない。「観念」という言葉がある。「観念」とは、モノについて当たり前のように考えている認識のことだ。日本人はいつから着物ではなく、洋服を着るようになったのか。いつから畳の上ではなく、ベッドに寝るようになったのか。いつから冷たい日本茶をペットボトルで飲むようになったのか。そんなに昔ではないはずだ。

 「観念」というものは、年を取れば取るほど、鎧のように固まっていく。それが凝り固まれば「固定観念」と呼ばれるようになる。新しいモノを生み出すのに、「固定観念」ほど邪魔なものはない。コロナを経験して人の価値観は間違いなく変わっていく。これからの時代の新しい価値を作っていくために、自分の「固定観念」という鎧を脱ぎ捨ててほしい。

 ※本コラムは2021年7月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


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