飲食業界も厳しい状況が続いているが、開店以来12連続で売上げを伸ばし続けている成長するカジュアルレストラン
がある。有限会社ピアンタ(東京・北区)は5店舗のカジュアルイタリアンを経営する元気企業だ。
中心の店である「カジュアルイタリアン ピアンタ板橋店」は、「イタリアンを気軽に楽しんでいただける、隠れ家的レストラン」
「安くておいしくて、ポップで陽気な店」というイメージを持つ。
「ピアンタの心得」と題した経営理念があり、「心のこもったおもてなしと快適な空間・空気感を提供することを信条とする」
「地域に根づき、店舗運営を通じ て豊かさ、笑顔、幸せに貢献し、常に必要とされる」「飲食店から日本を活性化させ、
日本中を明るく元気にする」が掲げられている。
同社は心得を単なるスローガンではなく、日常の仕事に活かしている、実践目標に近い経営理念である。
同店の特徴は独特の接客力と従業員教育にある。同店の 接客力の真髄は何か。「お客さまが求めていることに、
スタッフが気づく能力こそ、顧客満足度を上げる重要なポイントです。現場重視でやっています」と取締 役の伊藤秀樹氏。
スタッフの気づき能力を育て、スタッフ同士の交流促進を図ることを目的に、同店では開店10分前の朝礼ミーティング、
ランチの終礼ミーティング、夕礼ミー ティング、閉店前の終礼と、1日4回、短いミーティングを大事にしている。スタッフが
顔を合わせて、店で起こったことを報告し合う。具体的な話を通して、 経営理念の確認を共有するミーティングである。
陣頭指揮を執る伊藤秀樹取締役は 30代の若い経営者である。
社員のモチベーションを上げるために「仕事(作業)はしないで、志事をしろ」と檄を飛ばす。
志事とは、思いを込めて、気持ちを 込めてやろう、という意味を含んでいる。キッチンのスタッフに対しても、「仕込み」ではなく
「志込み」の精神を訴えている。思い、気持ちを込めれば、マン ネリを防ぎ、味も変わってくるという。
ホールスタッフに対しても、人を迎える気持ちを大切にするよう呼びかけている。
「仕事に真剣になるのではなく、お客様に真剣であれ」が口ぐせだ。
お客様にどうしたら喜んでいただけるか、人として当たり前のことを大切にしている。
前向きで、明るく、現場感覚を活かした同店は常連客が多く、口コミでリピート客づくりが増えている。
上妻英夫