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第161話 波紋を呼ぶ相続税対策

強い会社を築く ビジネス・クリニック

先月の中旬、個人の相続対策に関して、

東京地裁から、ある判決が下された、とニュースになりました。

 

内容を一言で言うと、

「国税庁の通達に従った相続財産の評価が認められなかった」

というものです。

 

コラムをお読みの皆様は、一瞬「えっ?!」と思われたでしょう。

「国税庁の通達に従っているのに、なんで認められなかったの?」と。

 

この裁判の内容は、次の通りです。

 

東京地裁が路線価に基づく相続財産の評価を「不適切」としたのは、

2012年6月に94歳で亡くなった男性が購入していた

東京都内と川崎市内のマンション計2棟。

 

購入から2年半~3年半で男性が死亡し、

子らの相続人は路線価などから2棟の財産を「約3億3千万円」と評価。

銀行などからの借り入れもあったため、

相続税額を「ゼロ」として国税側に申告した。

 

だが男性が購入した価格は2棟で計13億8700万円で、

路線価の約4倍だった。

国税当局の不動産鑑定でも2棟の評価は約12億7300万円で、

路線価とはかけ離れていた。

 

このため国税側は「路線価による評価は適当ではない」と判断。

不動産鑑定の価格を基に「相続税の申告漏れにあたる」と指摘し、

相続人全体に計約3億円の追徴課税処分を行ったが、

相続人らは取り消しを求めて提訴していた。

 

こういう内容でした。

 

 

これをまとめると、

 

①90歳を超える高齢者が相続対策として、

 10億円もの借金をして不動産2棟(A,B)を取得した。

 

②不動産A、Bの合計は、14億円だった。

 Aは8億円、Bは6億円

 

③3年後に死亡した際に、これらの不動産を相続するために

 通達に従って評価すると、その評価額は、約3億円だった。

 Aは2億円、Bは1億円

 

④銀行からの借入金などもあったため、

 結果的に相続税は「ゼロ」になった。

 

⑤相続人(家族)は、不動産Bを、

 相続が発生して9カ月後に5億円で売却している。

 

⑥その後、税務調査が入り、相続税を計算するときの、

 Aが2億円、Bが1億円

 というのは、おかしい!と否認された。

 

⑦相続人(家族)からすると、

 相続税の計算方法は、国税庁が定める通達に従って

 計算した結果であり、おかしいことはない!→裁判へ

 

⑧地方裁判所は、税務署が正しい、と判断した。

 

________________________________

不動産を相続により取得した場合、通常なら、

建物であれば、固定資産税評価額

土地であれば、路線価

で評価します。これは国税庁の通達で定められています。

 

そして、それを賃貸していれば、そこから更に評価を下げることができます。

これ自体をみれば、何の問題もありません。

実際にそのようにして相続税を節税している人はたくさんいます。

 

しかし、今回の場合は、

①90歳を超える高齢者が、多額の借金までして、

不動産を2棟も購入したこと

 

②相続税を計算するときは、不動産Bは1億円と評価したのに、

まもなく、5億円で売却していること

 

③相続税はゼロだったこと

 

④さらに、銀行の稟議書に「今回のスキームは、節税のため」

というような表現が載っていたこと

 

となると、税務署としては、

「確かに通達に従って評価しているとはいえ、

節税のために行ったということが明らかであり、それは“けしからん”」

と考えたのです。

 

税務署が、「これは“けしからん”」

と考えた場合には、伝家の宝刀(総則6項)を使って否認してきます。

 

総則6項というのは、

「この通達の定めによって評価することが

著しく不適当と認められる財産の価額は、

国税庁長官の指示を受けて評価する。」

というもので、税務署の一存で否認を使えるという、

まさに伝家の宝刀なのです。

 

今回は、この伝家の宝刀が抜かれてしまい、

納税者の相続税申告はおかしい!と判断されてしまったのです。

 

今回のような大型の税務対策を打つ場合は、

いわゆる“ストーリー”が非常に重要になってきます。

 

例えば、

 

・いまの住まいの騒音、振動が気になってしまった。

 その他、不快、不便だと感じるようになってきた。

 

・だから、新しい住まいを買って、そこに住んでみた。

 

・買って住んでみたはよいものの、

 やはり問題が出てきたため、更にマンションを買った。

 

こういった理由で不動産を取得したということを

エビデンスとして残したうえで、

 

・相続が発生してから、すぐに売らない。

 

・銀行と話をする際も、「節税で」とは一切口にしない

 

であれば、結果が違ったでしょう。

 

「取引、行為に、そもそも節税目的はなかった、

ただ、結果的に節税になったにすぎない」

ということをエビデンス上で、上手に残すことが重要です。

 

これは、個人でも、会社でも同じことがいえます。

結局、「こういうつもりだった。」と口で答えても、ダメなのです。

最初からストーリーを練り上げて、それをエビデンスとして残すこと、

この思考を持っていただきたいのです。

 

 

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