4)長い経営には何がおこるかわからない
経営には、マサカの坂があります。長い時間のなかで、何が起こるかわからないのです。経営環境が大きく変わり、それでも会社が生き残るためには、事業を大きく変えてしまうことも、往々にしてあります。いわゆる事業転換です。そうせざるをえない時があるのです。
大災害の被災を受けて事業転換せざるをえなくなった。後継者が不在のためM&Aで株式を売却せざるをえなくなった。大きな品質事故が起こって事業縮小せざるを得なくなり、従業員を大幅に減らした。
等など、中小企業のマサカの坂は、毎日どこかで起こっているのです。それがいつ、自分の会社にくるかはわからないだけ、なのです。
そう思えば思うほど、事業承継税制には、手を付けないでほしいのです。
5)会計事務所が勧めるワケ
なぜ会計事務所は事業承継税制を勧めるのか。この税制の承認を受ける時、そして認証後、最初の5年間は毎年、その後も3年おきに、税務署への資料提出が必要になります。猶予の条件を満たしているかの確認資料です。
会計事務所にすれば、通常の申告業務以外の新たな業務受託ということになります。いわば、会計事務所にとっては、いいメシの種なのです。税理士協会においても、事業承継税制の活用を各会計事務所に勧めています。業界をあげて新事業拡大を目指しているのです。
しかしこの事業承継税制はあくまでも、国にとっての税の取りっぱぐれがなくなるだけです。猶予と称しつつ、必ずどこかで召し上げることになるのは目に見えています。その一方で、事業承継税制を受けた側にとっては、認定取り消しの要素があちらこちらに存在しています。多くの会計事務所は、そのリスクの実態を把握できていないです。
リスクの詳細を理解している会計事務所は少数派です。もし会計事務所が事業承継税制を勧めてくるのなら、この記事で紹介したリスクを、その事務所に投げかけてほしいのです。事業承継税制を使っての株式対策だけは、絶対にしないでほしいのです。