企業において、月例給与計算の根拠となる就労時間を把握する場合、法定労働時間と所定労働時間の2つの概念があることは皆さんご存知のとおりですが、念のため確認しておきましょう。
①法定労働時間 は、労働基準法に定められており、その第32条第1項により週に40時間まで、同条第2項により1日8時間までと定められています。
この場合の1週とは、就業規則その他に別段の定めが無い限り、日曜日から土曜日までをいい、1日とは午前0時から午後12時までの暦日を意味します。
②所定労働時間 とは、労働者と使用者の間に交わされた労働契約上の就労時間のことです。つまり就業規則に記載された始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた就労時間のことです。
(勤務時間および休憩)
第12条 1日の正規の就業時間は、実働7時間45分とし、始業、就業および休憩の時刻は、次のとおりとする。
始 業 8時30分
終 業 17時15分
休 憩 12時00分より13時00分
所定労働時間と法定労働時間がともに8時間である場合は問題ないのですが、上記のように就業規則に定められた一日の就労時間が法定時間より15分短い実働7時間45分だとして、1月の就労が21日とすれば、所定労働時間は法定時間より月にして5時間15分ほど短いと計算できます。この所定時間を超え、法定時間までの労務があれば、その時間は法定時間内残業です。
労基法では法定労働時間を超える超過勤務がある場合には2割5分以上の割り増し賃金を支払わなければならない(第37条第1項)と定めています。
この会社の場合、就業規則で定めた所定労働時間に加えて20時間ほどの残業勤務があるとすれば、20時間分について時間外勤務手当を支給しなければなりません。ただし、法定時間内残業に相当する労務がその月5時間あったとすれば、時給で計算した金額の手当加算は必要ですが、法定時間を超える超過勤務ではありませんから、2割5分以上の割り増し賃金は不要となります。
法定時間内の残業と法定時間外残業を区別して計算するのはわずらわしいから、単純に25%増しで計算して時間外手当を支払う方が一般的かもしれません。しかし少しでも無駄を省きたいのであれば、それぞれを正しく計算し、少しでもコストを下げるといった選択肢もありではないでしょうか。