menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

戦略・戦術

第210回 事業承継税制だけはやめなさい

強い会社を築く ビジネス・クリニック

2)株式を担保として差し出すことになる

事業承継税制の納税猶予を受けるには、担保が必要になります。猶予される納税額に対する担保です。納税猶予される者が対象なので、株式を引き継いだ後継者が担保を差し出すことになります。この“担保が必要”ということが、事業承継税制のなかであまり大きく取り扱われていません。この税制の申請者にとって大きなデメリットとなるからです。だから国は声を大きくして言いたくないのです。担保となるのは、「有価証券、不動産等」とされています。多いのは、後継者が会社の株式を担保として差し出すケースです。後継者には、株式以外、そう大きな財産などないからです。

 

担保が外れるのは、事業承継税制の認定が取り消しになり、猶予されていた税金を払ったあとです。結局、「猶予」という名の税務署に対する「借金」なのです。だから、猶予期間には金利もつきます。いま現在では約0.7%前後、と言われています。事業承継税制を受けて数年後に認定取り消しになれば、猶予されていた税金と利息を、10カ月以内に払わなければならないのです。これはかなり大きなリスクです。

 

3)種類株式の活用も、減資もできない

事業承継税制を一度始めてしまうと、減資や株式の種類を変えることは、認められません。株式交換なども含めて、定款変更を要する資本の見直しが、許されないのです。それでも減資や種類株式導入など、資本構成を見直すことを実施したならば、そのときは事業承継税制の認定取り消しです。ただちに猶予されていた税金と利息を、支払わなければなりません。

 

長い経営において、いつ何があるかわからないのです。

“こんなときはいったん減資をすればよい”

“ここは種類株式を使ってリスク回避したほうがよい”

等といった局面がいつやってくるかわからないのです。そのような一大事に、これらの最適策を選択できない、というのは大いなる経営リスクです。

 

事業承継税制の認定を受けたあとは、株式資本において、普通株式しか扱えなくなります。それ以外を認めないのです。そういうルールなのです。

“特殊な事情があって…”等という言い訳は通用しません。そんながんじがらめのルールを受け入れてまで、事業承継税制で承継対策をするなど、絶対にやめてほしいのです。事業を引き継ぐ、あとの者が苦しむだけなのです。

次のページ

1

2

3

第209話 令和6年の税制改正前のページ

第211回 自己資本比率を上げるため持ち合い株式を整理せよ!次のページ

関連セミナー・商品

  1. 「第37期 後継社長塾」

    セミナー

    「第37期 後継社長塾」

  2. 社長の財務戦略

    社長の財務戦略

  3. 井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

    音声・映像

    井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

関連記事

  1. 第4話  「海外から加工度を上げ輸入し人件費を下げよ」

  2. 第92話 社長の強い自己顕示欲は抑えて下さい。

  3. 第82話 利益が積み上がった企業の剰余金 貸借対照表を理解しているのでしょうか?

最新の経営コラム

  1. 第184回 長野土鍋ラーメンたけさん小布施店 @小布施 ~世界に躍進する「ビーガン味噌ラーメン」

  2. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年5月8日号)

  3. 第328回【社長のリーダーシップ編⑤】リーダーに必要な4つの要素④「変化への対応能力」

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 経済・株式・資産

    第120話 経営とリスク(5)
  2. マネジメント

    挑戦の決断(33) 感染症に立ち向かう(上杉鷹山)
  3. キーワード

    第71回 仕事を体験できる場をつくる「フェニーズ」
  4. マネジメント

    故事成語に学ぶ(11)糟糠(そうこう)の妻、堂より下さず
  5. 健康

    第27回 温泉津温泉(島根県) 開湯1300年の名泉は「アツ湯」の最高峰
keyboard_arrow_up