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戦略・戦術

第212回 税務調査にひるむな!

強い会社を築く ビジネス・クリニック

神戸商事(仮称)に、大阪国税局の資料調査課が税務調査にやってきました。

資料調査課というのは、「リョウチョウ」と呼ばれ、国税局のなかでも精鋭部隊が集められた部門です。

税務署を束ねる国税局の、そのなかでも選ばれしメンバーが集まる部門です。

 

国税局OBの話では、だいたい、「リョウチョウ」が入る場合は、“アタリ”をつけている、とのこと。

つまり、事前の下調べで、「ここは怪しい」というテーマを見つけて、それを狙いに来ることが多いのです。

 

なぜ、神戸商事(仮称)に、リョウチョウが税務調査に入ったのか?

それは、元役員による不正事件(横領・着服)があったからです。

そして、それは、地場のテレビ局、新聞もこぞって取材し、不正事実は、公衆の目に触れる機会が多くありました。

 

特に、不正事件は、狙われやすいと言います。

 

横領、着服というのは、色々なケースがありますが、簡単にいえば、会社の利益を、自分のものにしてしまう、

自分のポケットに入れてしまう、ということです。

 

こういう事件では、ある意味、会社は被害者ですね。

神戸商事(仮称)の場合もそうでした。

しかし、税務当局は、こういう事件について違った見方をします。

会社を被害者として見てくれないのです。

 

例えば、役員が着服して1億円をポケットに入れたとします。

そうすると、これは、本来、会社に入るべき1億円だったはず。

だから、会社は1億円を利益に計上しなければいけなかった。

でも、利益に計上していなかった。という論法です。

 

税務調査が開始してから1カ月後、

国税局側から提示された調査結果は、7年前にさかのぼり、指摘金額もかなりの金額になっていました。

通常、税務調査は、過去3期分を見られることが多いですが、本当に悪質であれば、過去7期までさかのぼることができます。

今回の件は、悪質だと捉えられ、7期前までさかのぼられました。

 

そして、高圧的な態度の調査官から、次のように言われました。

「国税局側としても、徹底した調査を行ってきており、調査結果には、自信をもっています。修正申告されてはいかがですか?もし、修正申告を拒否される、ということでしたら、我々としては、明日にでも更正処分をうつ準備をしています。御社の回答は、来週の月曜日までにお願いします。くどいですが、回答をいただけないようなら、我々はすぐに更正処分をうちますので・・・」

 

このように強い口調で、自信満々の口調で言われました。

しかも、早く!早く!と、急かしてくるわけです。

 

しかし、会社として納得できなければ、修正申告をしてはいけません。

そのときは、更正処分(更正決定)してください、と伝えるべきです。

 

修正申告というのは、会社が自主的に誤りを認めること、

対して、更正処分(更正決定)というのは、税務署が会社の誤りを正すこと、

 

この2つの違い、お分かりになるでしょうか?

 

国税局としては、手間をかけたくないので、会社に修正申告を勧めてきます。これを慫慂(しょうよう)と言います。

「修正申告しろ!」とは言えずに、勧めてくるわけです。

 

神戸商事は、「会社としては、不服なので、更正処分をしてください。」と繰り返し伝えました。

 

国税局とやり取りを繰り返すうちに、2つのことが分かってきました。

 

1つ目は.国税局が急かしていたのは、「時効」があったからです。

当初、国税局が「早く修正申告されては?」と再三伝えてきたのは、7期前の分が、時効になるからでした。

神戸商事が、この背景に気づいてからは、ゆっくりと、のらりくらりと国税局側とのやりとりを行いました。担当者の焦りがよく分かりました。

結果、7期前の分は、時効になりました。

 

2つ目は、国税局は、「更正処分」は出来る限りしたくないということ。

これまで、「国税局として、もう待てない!こちらも出るところに出る!」というフレーズを神戸商事は、何度も聞いてきました。

 

しかし、神戸商事も、修正申告をすることなく、のらりくらりと、ときに厳しく、国税局の主張を受け入れず、時間をかけてきました。

 

すると、国税局の態度が徐々にかわってきました。

当初、相当強気だったものが、だんだん、トーンダウンしてきました。

更正処分をするというのは、最終的には、国税局長の決裁まで必要とします。

そうなると、確実に勝てる勝負でないと進めないですし、しかも、相当な資料を準備する必要があるため、現場としては、できるだけ避けたい、のです。

 

さらには、国税局(税務署)には、異動があります。

異動は、毎年7月前半です。

異動前に、持ち越し案件はなくして、早く手仕舞いしてしまわないと大変です。

 

結果として、国税局が、指摘する金額も当初の半分にまで減り、「これで、修正申告してくれませんか?」という感じになってきました。

高圧的だった態度から、一点して、懐柔する方向に変わってきました。

 

これらの点から、私たちが知っておくべきことは、

「税務調査には時効があること」

「税務署は、更正処分は絶対にやりたくないこと」

この2つです。

 

国税局、税務署から高圧的に言われても、決してひるむ必要はありません。

神戸商事の顧問税理士さんは、国税局に対して強く主張することもなく、ただ、私たちと国税局の攻防を後ろから見ていただけでした。

 

神戸商事がこうした進め方ができたのは、私たちICOコンサルティングが持つネットワークで、国税局が何を考えて、どういう手を打てばよいか、アドバイスしてくれる元国税局のキャリアOBや、税法や税務理論に精通した税務署OBの存在があったからこそです。

 

読者のみなさまの会社で、税務調査対応でお困りであれば、ICOコンサルティンググループにお問い合わせ下さい。

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