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新技術・商品

第63話 「なにこれ?」型の商品は、やっぱり強い!

北村森の「今月のヒット商品」

 私はかねてから「景気の先行き不透明な時期にこそ、消費行動は先鋭化する」と考えています。たとえば消費税の増税後、そして、コロナ禍が収まらない現在もそうです。

 

 お金に余裕がなくなると、人は消費を諦めるかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。消費というのは我慢できるものではないんです。ただし「勝負は一度」となります。買い物に失敗したからといって、他社の別の商品にもう一度手を出せるほどのゆとりはないからです。

 

 消費はある意味でゲームです。景気の先行き不透明な時期というのは、ゲームのルールがいわば厳しくなる状態ですね。そういうときこそ、人は消費により真剣勝負を挑むようになり、一発で勝負を決めにかかる。ここでいう勝負とは、「買ってよかった」「こんな商品を見つけて、手に入れられて嬉しい」と感じるかどうかという話です。

 

 少し前に、この連載で「レトルトパウチ食品をただ温めるだけの家電商品」である「レトルト亭」がヒットしているという話を綴りました。これなど、まさに好事例でしょう。「なにこれ?」とびっくりするような単機能型の商品ですけれど、使ってみたいと興味をそそる存在であり、また、人に伝えたくもなる家電ですよね。だからこそ、少なからぬ人はそこに勝負をかけた。

 

 「なにこれ?」と思わせる商品は、こういうときにやっぱり強いんですね。もうそれだけで消費者の勝負心をくすぐりますから。

 

 で、今回は、私が最近出逢った「なにこれ?」型の商品事例を2つお伝えしましょう。

 

 まずはこれです。マスタードなんですが、3種のセットで5400円もします。もうその値段だけで、なんだこれは?という感じですよね。普通にスーパーマーケットでマスタードを買えば1瓶300円前後でしょうし、高級品でもまず1000円もしないでしょう。それが3瓶で5400円ですから、1瓶あたり1800円もするわけです。

 

 この商品、「宗紀(そうき)マスタード」といいます。香川県のハンドライフ・クリエイトという企業が作っているマスタード。恐る恐るでしたけれど、気になって仕方なかったので買ってみました。

 

 口にして、ああこれは値が張ってもしょうがないかも、と思いました。ペースト状の瓶をまず試したのですが、ハムステーキと一緒に味わうと、ハムの脂がぐんぐんと美味しく感じられます。と言いますか、ハムよりマスタードこそが主役と表現してもいいかも、と言えるくらい、マスタードに色気があるんです。甘みもコクも。

 

 次に、粒状になっている2種を順に口に運んでみました。もうマスタード単体で楽しめるほどの完成度と感じられました。スプーンで少量をすくって、それで白ワインを楽しみたくなるといった仕上がりです。

 

 聞けば、香川県産の塩やハチミツを使って仕上げているそうです。この値段ですから、日常的に使うというのは躊躇われるものの、誰かを驚かせる手土産に使ってみたいと私は思いました。

 

 もうひとつの「なにこれ?」はこちらです。手のひらに収まるほどの小瓶に、「旨味」と書かれていますね。

 

 これ、カクテルの香りづけによく用いられるリキュールである、ビターズの一種です。商品名は「ザ ジャパニーズ ビターズ」。千葉県のJCC AGENTの手で作られた商品で、値段は100mlで3080円。これもまた安くはありませんね。

 

 そのラベルから想像がつくと思いますが、このビターズは旨味がテーマです。原材料は昆布、椎茸、鰹節、ユズ、それと醸造アルコールです。言ってみれば、出汁のリキュールなんですね。和のビターズとも表現できる。

 

 そんなもの、どうやって使うのか。私が最初に口にしたのは、酸味の強い日本酒に、このビターズを数滴垂らしたという1杯でした。すると、酸味の良さはそのままに、ずいぶんとまろやかになるんですね。意外なまでに納得がいきました。そもそも出汁の味って、私たちに親しみあるものですしね。

 

 あと、私が自分の手で試したのは、ビールとトマトジュースを合わせたレッドアイに加えるというもの。レッドアイには、トマトジュースの代わりにクラマトジュース(ハマグリエキスを加えたトマトジュース)を使うレシピもありますね。それの出汁版という感じで、味に深みが出ました。さらには、ちょっともったいない使い方ですけれど、野菜を炊いたのに少しだけ垂らすと、贅沢なひと皿になった気がしました。

 

 すごいマスタードと、すごいビターズ…。実は私、これら2つの商品をともに、食のプロから教わりました。「宗紀マスタード」は高松市の超人気料理店で肉のパテの上にちょこんと乗っていたのが、もう抜群の存在感でした。「ザ ジャパニーズ ビターズ」のほうは、富山市にあるやはり人気の酒亭の日本酒担当スタッフが、こんな遊びができるんです、と勧めてくれて知りました。

 

 つまりどちらも、プロが振り向いた商品であるわけです。プロもまた「なにこれ?」を日夜、探し求めている、という話なのだと思います。

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