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第62話 観光業界は、これから大混戦期に!

北村森の「今月のヒット商品」

 コロナ禍がこの先どうなるか余談を許さない一方で、観光業界は感染対策を講じながら、次の一手を懸命に探っている状況ですね。

 

 不安要素もあります。アフターコロナ期に、全国各地の観光業界に追い風が吹くとは限らない、という見方もあるからです。どういうことか。

 

 今月(2022年9月)上旬、ワクチンを3回接種している人ならば、海外から日本に入国する際の検査証明書提示が不要となりましたね。

 

 これまでは出国72時間前までに現地で検査を受ける必要がありました。これが海外旅行を決断するうえで2つの高いハードルでした。

 

 まずは出費面です。私が今夏、ハワイで出国前に検査を受けた際には160ドルかかりました。家族での旅行だったら、人数分の料金が重くのしかかります。

 

 そしてなにより、もし陽性となっていた場合は、帰国できずに現地で足止めです。この2つが海外旅行でのネックとなっていたわけですが、ワクチン接種などの条件にかなっていれば検査証明書が不要となったことで、海外に行こうという人は少しずつですが増えるかもしれません。

 

 となると…。国内の観光地にとっては苦しい状況を招くともいえそうです。国内の有名観光地だけでなく、海外の人気渡航先も競合相手として復活するわけですから。

 

 では、各地の観光地にすると、どんな手を打つのが有効なのか。立派な設備を誇る施設の整備か。

 

 いや、必ずしもそうではないでしょう。人はそうした存在を旅行先に求めているとは限りませんね。だったら、ニュースに上がるようなイベントの開催か。これも正解とは言い切れません。イベントには確かに人の関心を集める力はありますが、かといってイベントを繰り返していては、その地域が疲弊しかねません。

 

 ならばどうする? 「そこにすでにあるものを生かす」。やはりこれがあらゆる意味で有効なのではないかと、私は思います。

 

 

 前置きが長くなってすみませんでした。今回お伝えしたいのは、香川県の小豆島の話です。

 

 今年は「瀬戸内国際芸術祭」で盛り上がっていますが、この芸術祭を抜きにしても、島内それぞれの地区で、なにげない普段から個別の店や人が頑張っている印象があります。よく知られているのはオリーブオイルですが、それ以外にもパン屋さん、洋菓子屋さん、ジェラート屋さんなど、お客さんを集めている人気店が島に点在しています。だから島内めぐりがとても楽しい。

 

 代表的な店としてここで挙げたいのが「こまめ食堂」です。島の山間部に位置する一軒で、昭和初期の精米所だった小さな建築物をリノベーションして店舗にしています。

 

 地元の食材を生かした定食、柑橘類のジュース、それに手づくりの焼き菓子を口にできる食堂なのですが、店を訪れるためにはちょっと手間がかかります。当日の朝に電話して予約しないといけません。私が朝一番で電話してみたら、最初の10分ほどはずっと話し中でした。相当な人気であることが窺えます。

 

 定食の値段は1800円とかなり立派ですし、観光客を当て込んだ商売をしているのかなあ、と思いながら店へと向かったのですが、実際に入ってみると…。

 

 いや、ここまでやるか、と驚くような内容でした。すぐ上の画像を見てください。大きなおにぎり2つ、皿からはみ出さんばかりの地魚の唐揚げ。デザートまでついてきました。田舎の親戚の家で手厚くもてなされているような感覚を抱いたほどです。

 

 食べ切れるかなあ、と不安になりましたが。大丈夫でした。食後はもう満腹状態でしたけれど、どのひと皿も純朴な味わいで、口にしていてとても楽しいんです。地のもの、季節のものをとことん頬張るのは、やはり旅先ならではと実感できましたし。

 

 きっと、この店が何を伝えようとしているかが明快であるからこその楽しさだったかもしれません。小豆島のことを知ってください、と、この定食が語りかけてくるような時間でした。ただ単に贅沢だとか皿数が多いだとかいう話ではないんですね。

 

 それこそが、地方の観光地が人を呼び込むための大事なポイントではないか、とも私は感じました。何も超立派な観光施設でなくてもいい、他ならぬここを選んで来た甲斐があった、と、いかに思ってもらえるか。そこが重要なわけです。

 

 

 この「こまめ食堂」は、先ほど触れたように、小豆島の山間部にあり、レンタカーで向かうのが基本です。そんなに便利な立地ではありません。でも、ここは農村歌舞伎の歴史を刻む集落であり、また、棚田が美しく手入れされている集落でもあります。「こまめ食堂」をめがけてきたからこそ、食事の前後に、農村歌舞伎の舞台や棚田をこの目で確かめることもできた。

 

 「地元の当たり前」のなかに、旅する人を惹きつけるものがある。それはもしかすると、国内外の名だたる観光地にも匹敵するほどの魅力を備えているものかもしれない。そんな気がしました。

 

 「地元の当たり前」とはつまり、先ほどお話しした「そこにすでにあるもの」です。観光業界の大混戦期を生き抜くヒントは、その中にあるはずです。

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